襲撃事件がもたらしたもの

襲撃事件がもたらしたもの
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6%成長の罠を打ち破り、7%成長の実現に向けて歩み始めた時、そして2015年、市民1人当たり1,314ドルの収入を記録して下位中収入国の地位を得た時、バングラデシュは近年最大の衝撃を受けた。
この影響でバングラデシュの展望は急激に変化した。
2016年7月1日、ダッカ(Dhaka)グルシャン(Gulshan)にあるホーリーアルチザンベーカリーでテロリストが実行した、外国人17人を含む20人の無慈悲な殺害はバングラデシュに新たな現実をもたらした。
イスラム教価値観を持ちながら他宗教に寛容であるイスラム穏健国であること、自国が外国人への温かさともてなしで好評を得ていることを謳った国は、テロリスト襲撃事件の影響で国際レーダーの下にさらされることとなった。

バングラデシュの経済成長は、この事件によって懸念を生じた。あの恐怖の夜、国民を失った日本とイタリア、そしてインドはバングラデシュ発展の重要パートナーである。
日本が最も大規模な援助国だ。2015年には3.66億ドル(387億円)を海外支援として支出している。日本は最近、第37回の政府開発援助(ODA)貸付パッケージに調印した。金額は日本の対バングラデシュODA史上最高額の16.5億ドル(1,745億円)。金利は0.01%、返済期間は40年で、10年の猶予期間が含まれる。およそ230の日本企業がバングラデシュに投資し、その大部分は輸出加工区に対するものだ。投資額は2.5億ドル(264億円)にのぼる。日本の支援や投資は、災害対策部門や発電所や深海港、地下鉄などのインフラ開発部門に対してだ。残念なことにダッカ襲撃事件で亡くなった7人の日本人は、バングラデシュの地下鉄開発プロジェクトで働いていた。2015年、バングラデシュの日本への輸出額は6.15億ドル(650億円)で、そのうち4.48億ドル(473億円)を既成服(RMG)が占めている。

イタリアに関して言うと、この国も既製服を筆頭としたバングラデシュ製品の重要な輸出先の一つだ。2015年、バングラデシュはイタリアに商品を11.7億ドル(1237億円)輸出し、そのうち10.7億ドル(1131億円)が衣料品だ。イタリアはバングラデシュへの重要な送金元の一つでもある。

一方、2015年のインドからの援助支出は9300万ドル(98億円)で、バングラデシュからインドへの輸出額は5.42億ドル(573億円)だった。バングラデシュはこれらの国々が、持続可能な経済成長や貧困の解消を成し遂げる支援を今後も継続してくれると期待している。
首相がそれぞれの国に対し、反テロリズムに向けての協力を確約したことは、ダッカにイスタンブール、パリ、ニース、イラクと世界各地で人々の命を奪うテロリズムが今や世界的現象であるという事実の認識でもある。

投資家や開発パートナー、外国社会から信頼を取り戻すため、バングラデシュは力を入れなければならない。世界規模のメディア報道により、被害は既に打ち止めだ。今のバングラデシュは国内で働く外国人に対し、その安全を再び保障する必要がある。政府はグルシャンやバリダラ(Baridhara)外交区、ダッカ空港などの重要な場所でセキュリティを強化した。だがプロジェクトに関わる外国コンサルタントや職員には、現場レベルで働いている人々がいる。彼らの安全も保障されるべきだ。
我々はメッセージを国際社会に送る際には気を付けなければならない。首相はさらなる襲撃を恐れているが、その一方、最近国内で起こった襲撃の悪影響を追い払うため、平静を装う大臣がいるかもしれない。

だがダッカで働く外交官や開発パートナーの間では、ホーリーアルチザンベーカリーの襲撃事件は非常に深刻に受け止められている。職員に対して家族を自国に退避させることを許可した所もあり、多くの職員は家族をダッカから脱出させようと動き出している。デリーやバンコクといった地域支社を通して、操業の継続を検討している所もある。

これは明らかにバングラデシュにいる外国人の不安感の表れだ。この状況はバングラデシュへの潜在投資者や訪問者に影響を与えるだろう。もしバイヤーがバングラデシュに来ることを安全と感じず、他国に発注すれば、バングラデシュは衣服の重要な仕入れ先として、大きな困難に直面することになるかもしれない。

テロリストたちの社会的背景の衝撃的な事実は、とりわけテロリストの一部が在籍していた私立大学について、我々に教育制度についての内省を促した。民間銀行と同様、私立大学の一部は教育を商品化しており、この商品から利益を得ることができる。これらの大学の多くには登記官や監視官がおらず、副学長は会議室でなにも発言しない。いくつかの大学は人的資源やカリキュラムについての計画もなしに、有名人のコネで発展した。公立学校から貸し出された教師たちは、その大学に不可欠な一部分となる理由を見いだせないことがほとんどだ。これらの大学のカリキュラムは、学生を啓蒙された人間へと育てることを助ける全体論的な教育が含まれていない。その代わり、シラバスにある全ての事を少しずつ振り撒き、企業世界での需要を満足することを試みる。

世界ではテロリズムの影響は経済成長の減速によって示された。この減速は主に反テロ活動に対する政府の支出、そして投資の減少によるものだ。この新しい現実は、バングラデシュは成長の勢いを継続させるため、仲間の助けを得て安全確保措置の戦略を立てなければならないことを示している。

The Daily Star July 18 2016
http://www.thedailystar.net/op-ed/politics/ramifications-terror-attacks-bangladesh-1255117
翻訳:ハセガワ

#バングラデシュ #ニュース #ダッカ人質事件