バングラデシュは多様性を認める国か

バングラデシュは多様性を認める国か。そう問われたらあなたはどう答えるだろうか。

国民のおよそ90%を占めるイスラム教徒(ムスリム)は敬虔で、決まった時間に礼拝し、決まった時期に断食を行う。ムスリムはそれらの信仰行為をみんな同時に行うことで、ムスリム同士の結びつきや一体感を高める。そこによその宗教が入る余地はないし、他宗教に厳しい態度を取るのではないか。ついそう思ってしまわないだろうか。

果たして本当のところはどうなのか? それを確かめるため、まずバングラデシュの祝日を見てみよう。

【2016年 バングラデシュの祝日】
2月21日:ベンガル語国語化運動記念日 Shaheed Dibash ※ユネスコが制定した国際母語ディはこれに因む
3月26日:独立記念日 Independence Day  ※解放戦争を始めた日
4月14日:ベンガル新年(ボヘラ ボイジャック) Bangla New Year's Day 
5月1日:メーデー May Day ※討論会や映画上映などが行われる
5月23日:仏誕祭 移動祝祭日 Buddha Purnima  ※ブッダが生まれ、悟り、入滅した日とされる
7月1日:シャベ バラット ラマダン月前の祭り 移動祝祭日 Shab-E-Barat  ※アッラーが運命を決定する日
7月2日:シャベ カダール コーラン天啓の夜 移動祝祭日 Shab-E-Qudar 
7月3日:シャマトゥル ビダ 移動祝祭日 Jumatul Bida 
7月5ー7日:ラマダン明け祭り 移動祝祭日 Eid-Ul-Fitar 
8月15日:国家大葬祭  National Mourning Day  ※初代大統領ムジブル ラーマンが暗殺された日
8月25日: クリシュナ生誕祭 ジャンマシュトミ  Janmastami  ※ヒンズーの男神を祝う日
9月11-13日 :犠牲祭 移動祝祭日  Eid-Ul-Azah  
10月11日:ドゥルガ女神祭  Durgapuza  ※ヒンズーの女神に祈りをささげる
10月12日:イスラム暦新年 移動祝祭日 Moharram (Asura)  
11月7日:革命連帯記念日
12月12日:預言者(ムハンマド)生誕祭 移動祝祭日 Eid-e-milad-un-Nabi ※イスラム暦3月12日  
12月16日:戦勝記念日  Victory Day  ※300万人が犠牲になった
12月25日:クリスマス  Christmas  

国の独立に関わる記念日とイスラム教の行事は確かに多い。だがよく見てほしい。5月23日に仏教を開いたお釈迦さまの誕生日(悟り、入滅した日も同じと言われる)がある。8月25日にはヒンドゥー教の男神を祝うクリシュナの生誕祭、10月11日はヒンドゥー教の女神ドゥルガーを祝う日がある。(今年)12月にはなんとイスラム教の預言者ムハンマドと、キリストの降誕を祝うクリスマスの両方がある。ヒンドゥー教徒、仏教徒、キリスト教徒の割合はそれぞれ9.2%、0.7%、0.3%しかいないにも関わらず、イスラム以外の宗教的祝日がこれだけあるのだ。

法律を見てみよう。バングラデシュには「世俗主義の原則は、以下を“排除する”ことで実現される」という世俗主義(政教分離)を掲げた憲法12条がある。
“排除する”のはa全ての形式の地方自治主義、b国が宗教に政治的地位を認めること、c政治的目的のための宗教濫用、d特定の宗教を信仰する人への差別や迫害だ。また憲法41条では宗教の自由を定めている。

政権与党「アワミ連盟」もまた世俗主義を標榜する中道左派政権で、「他国との関係を断ち切ろうと思ったことは、一切ありません」(ハシナ首相:2016年6月8日記事“パキスタンと国交継続”http://bddnews.com/post/20160608_6113/)と全方位外交の姿勢をとる。

都市に住む人々の生活にも多様性が見られるようになってきた。典型的なのはラマダン中の日没後最初の食事「イフタール」だ。ごく一般的で伝統的なイフタール料理はジュースやナツメヤシ(ダーツ)、ピアジュ(玉ねぎとレンズ豆の揚げ物)を始めとした揚げ物料理、ポテトチョップ(ジャガイモのパンケーキ)、チョーラ(カレーの1種)、ムリ(膨らし米)などを組み合わせたものだが、最近はフライドチキンなどのファストフード、アイスクリーム、コーヒー、日本料理、韓国料理、中国料理、メキシコ料理、インド料理といった多種多様なものが食べられている。(2016年6月29日記事“イフタールの新名所”http://bddnews.com/post/20160629_6550/)

法律、政治、文化と見てきてわかる通り、バングラデシは本来多様性を認める、寛容な国といえるだろう。

だが多様性を認めないテロリストがグルシャンで襲撃事件を引き起こした7月1日の事件は、"無邪気なダッカの終わり"

http://bddnews.com/post/20160713_6957/になる可能性がある。

バングラデシュ国民は未来に向け、どんな国になることを選ぶのだろうか。

(吉本)2180字


参照
外務省 最近のバングラデシュ情勢と日本・バングラデシュ関係http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/bangladesh/data.html
JETRO バングラデシュの祝祭日https://www.jetro.go.jp/world/asia/bd/holiday.html
曾我法律事務所 バングラデシュの基本法制に関する調査研究http://www.moj.go.jp/content/000123990.pdf
BDDNEWShttp://bddnews.com/