通貨リスクに警鐘

バングラデシュの輸出は2016年には勢い付いた。だが今年は外国通貨に比べてタカが強い影響で、輸出に影響が出る可能性がある。ニューヨークに拠点がある世界的な信用格付け企業フィッチは分析する。

「2017年、バングラデシュの労働者コストは比較的低いままですが、輸出部門では実質為替レート(REER)がさらに高騰する可能性があります」
昨日フィッチが明らかにした。

REERが上昇すると輸出はより高価に、輸入はより安価になる。つまり、貿易競争力は低下する。

フィッチによれば、バングラデシュの衣料品輸出は勢いを保ち、国の輸出の81%を占め、昨年の11カ月で261億ドル(2.98兆円)の収入を国にもたらしたという。2015年の衣料品輸出額は246億ドル(2.81兆円)だった。

だがバングラデシュの政治や治安リスクはかなりあるという。

「治安面での事件や政治動乱により、外国投資家や既製服を筆頭とするバイヤーが、バングラデシュのビジネスから遠ざかれば、長期的な経済的打撃に繋がります」

2014年と2015年に勃発した政治動乱後は平穏さが戻ったが、強い政治的対立は継続している。2019年1月までに開催予定の国会議員選挙が近づくにつれ、広い範囲での暴動や道路封鎖が起こる可能性がある。

バングラデシュの対外金融は、次第に増えつつある十分な量の外貨準備高に支えられ、2016年12月時点には321億ドル(3.66兆円)に達した。

外国からの送金収入は2016年中頃から中東を筆頭に減少に転じ、2016年の年間収入額は昨年より11%少ない136億ドル(1.55兆円)になった。外貨収入や高く安定した実質経済成長から、フィッチはバングラデシュの格付けを「BB-」に保った。

「バングラデシュの格付けは、外貨収入の強さや高く安定した実質GDP(国内総生産)成長、構造的指標の低さ、著しい政治的リスク、銀行部門の健全性の弱さに見合ったものです」
フィッチはこのように述べた。

バングラデシュの実質GDP成長率は5年平均で6.5%で、「BB」に格付けされる各国の中央値3.5%より高いという。

「政治動乱や自然災害があったにも関わらず、ここ数年間の成長は非常に安定しています」

2016会計年度は公共部門の賃金引上げや金融緩和による購買力向上に支えられ、7.1%の経済成長率を記録した。

だがフィッチは送金収入減少による消費支出の減少を理由の一部として、GDP成長率が今会計年度は6.6%に、2018会計年度には6.4%に低下すると予測する。今会計年度上半期の物価上昇率は平均5.4%と、同僚国と比較して高い数字だが、政府の今会計年度目標値5.8%は下回っている。

フィッチによれば、GDPの36.5%に過ぎない小規模民間融資が影響を緩和するにも関わらず、バングラデシュは銀行に追加的な支援を提供する必要があり、それがリスクとなるという。

特に民間部門では、銀行の健全性や管理の水準が概して低い。2016年第3四半期時点では、公式の不良債権率は10.3%と高く、自己資本率は第1四半期の10.6%から10.3%へと低下した。国営の市中銀行6行の自己資本率はわずか5.6%だった。

バングラデシュの一般政府負債は、昨会計年度時点でGDPの32.4%相当だった。これは「BB」ランクの中央値51.4%と好対照だ。

だが、政府の収益額はGDPの9.9%で、フィッチが格付けした国の中ではナイジェリアに次いで下から2番目だった。

新付加価値税(VAT)の実施は2017年7月に延期された。新しいVATは収益を大幅に増やす可能性があるが、影響は最終的な税率やすべての商品で一律の税率などの詳細によって異なる。

バングラデシュは広範囲にわたり、世界銀行の統治指標(下から22%の位置、これに対し「BB」ランクの中央値は50%)などの構造指標で低い評価を受けた。

多くの社会指標は過去10年間で大きく改善されたものの、一人当たりのGDPは1443ドル(16.47万円)と「BB」ランク諸国の中央値5325ドル(60.79万円)に比べ、大幅に低かった。

「世界銀行の『Ease of Doing Business(ビジネスのしやすさ)』報告で、バングラデシュが190カ国中176位だったことは、困難なビジネス環境を示しています。また大幅なインフラ不足も投資の妨げになっています」

だが、政府はパドマ多目的橋など、現在進行中の大型インフラプロジェクトの進行に重点を置いているとフィッチはいう。

バングラデシュ/The Daily Star Jan 17 2017
http://www.thedailystar.net/business/fitch-warns-currency-risks-exports-1346302

翻訳:長谷川
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