見逃される大きな機会

見逃される大きな機会
バングラデシュは2007年以降、労働年齢人口が非労働年齢人口を上回っている。これは人口ボーナスとして知られているが、経済成長を加速させるこの可能性の窓は、2040年までに閉じ始めるだろう。

現時点で全人口の65%以上が15から64歳の労働年齢に該当する。

経済学者や人口学者によれば、バングラデシュは労働年齢人口に対して十分な数の仕事を用意できておらず、人口ボーナスが持つ可能性を完全に活かしきれていないという。

人口ボーナスを活用するには、教育や医療部門への大規模投資などの対策を取るよう学者たちは提案する。

東アジアや東南アジアの一部の国では、国民の大半が労働年齢である人口ボーナス期により高い経済成長を成し遂げるため、教育や医療などの人的資源開発に大規模な投資を行っているという。

バングラデシュの労働年齢人口は将来減少に転じ、その後、再び人口ボーナス期が到来することはないと、専門家は分析する。

中国や日本、その他多くの国が人口ボーナスを活用して経済を発展させたが、バングラデシュでは物事がうまく軌道に乗っていないという。

過去数年間、バングラデシュ経済は上手くいっていたが、現在、過去20年間で最も低い雇用水準となっている。

700万人近くを活用できずにいるバングラデシュは、今日の世界人口デー2017を"家族計画:人々の地位向上と国家の発展"という主題を掲げて迎える。

バングラデシュ統計局の最新労働力調査によれば、国内では2013年から2015-16会計年度にかけ、新たに140万の雇用を生み出したに過ぎないという。2010年から2013年には400万の雇用を生み出していた。

雇用創出の減速は、この先記録されようとしている高い経済成長率に関する疑問を投げかけた。一部の経済学者はこの現象を"職なき成長(jobless growth)"と呼んでいる。
パワー・アンド・パーティシペーション・リサーチセンターの執行会長で経済学者のホサイン・ジルル・ラーマン氏は、労働力調査のデータに言及した。
「我々は人口ボーナスを活かしてきませんでした…若者たちは期待する職を一切得られず、失望感が増しています。雇用の機会は減少しました」

ジルル氏は人口ボーナスを活かせなかった理由として、教育制度の欠陥や失業者の増加、高い失業率などを挙げた。

ジルル氏によれば、中流雇用市場は一部の部門が外国人労働力に占領されつつあり、懸念を招いているという。

「我々は人口ボーナスに無関心で、これを活かせていません」
人口ボーナスに関する誤解があるとジルル氏ははいう。人々はバングラデシュの人口ボーナスが永遠に続くと思っているのだ。

「人口ボーナスの経済ボーナスへの転換が時間制限を伴うことを知っている人は少数です…緊迫感が必要です。残念ながら、我々にはその緊迫感がありません」

人口学者のAKM・ヌルン・ナビ氏もジルル氏に同調する。人口ボーナスは一般的には30~35年継続するという。通常、一つの国に人口ボーナスが訪れるのは1度きりだ。

「今、この国には消費者以上に生産者がいます…我々は人口ボーナスという可能性の窓を得ましたが、これを経済ボーナスへと転換させなければなりません」
ナビ氏はデイリースターに話した。

政府は2041年までに高所得国になる目標を立てたとナビ氏。
「人的資源を適切に活用することでのみ可能となるでしょう」

出生率がこれまでと同じように低下を続ければ、労働力供給の低下で、人口ボーナスはもっと早く終了する可能性があるという。

「政府はいくつかの構想に着手していますが、それでも既に人的資源を適切に活用する計画策定に出遅れています」

政府は教育と医療を中心に複数部門に力を入れるべきだとナビ氏。教育は証明書志向ではなく、技術と市場志向であるべきだという。

政府の政策立案者は、人口を人的資源に転換する様々な取り組みの実施をたびたび口にするが、状況はさして改善していない。

国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関する最新進捗報告は、人間開発における状態の悪さを示している。

"国連持続可能開発ソリューションネットワークに"よる"SDG指数・ダッシュボード報告書2017"の中でバングラデシュは、157カ国中120位に位置している。

この報告書の中でバングラデシュは、17の開発目標のうち10項目で赤マークを付けられた。赤マークはその目標を達成するために大きな困難を乗り越える必要があることを示しているという。

赤マークが付いた目標は以下の通りだ。
"飢餓をゼロに"
"全ての人々に健康と福祉を"
"質の高い教育をみんなに"
"エネルギーをみんなに、そしてクリーンに"
"働きがいも経済成長も"
"産業と技術革新の基盤をつくろう"
"住み続けられるまちづくりを"
"海の豊かさを守ろう"
"平和と公正を全ての人に"
"パートナーシップで目標を達成しよう"

バングラデシュは熟練・半熟練・未熟労働者の一大輸出国として浮上したが、22カ国以上への輸出の大部分は未熟な労働者だ。

「まだ我々には、人口ボーナスを活かすための時間があります」
ダッカ大学人口科学部のアミヌル・ホク学部長は話す。

民間部門や個人による取り組みが拡大しており、"今後数年で上手く計画を立てられれば"成し遂げられるとアミヌル氏。

アミヌル氏によれば、ボーナスを最大限に活用するためには"質の高い人的資源の輸出"、"民間部門の拡大"、"政府部門の拡大"、"自己起業の機会創出"の4分野で入念に考慮された協調的な計画が必要だという。


バングラデシュニュース/The Daily Star Jul 11 2017
http://www.thedailystar.net/frontpage/unemployment-problem-in-bangladesh-big-opportunity-passing-economic-growth-1431280
翻訳:長谷川
#バングラデシュ #人口ボーナス #持続可能な開発目標