初めてのダッカ~路地の風景~

車は相変わらずクラクションを鳴らしながら北上する。目的地はベンガル語でポッド・ブミと呼ぶ〝知識人犠牲者の碑〟だ。

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その途中で見かけた電線。これだけ人口密度が高いと各世帯へ引き込む電線はものすごい数になるのだろう。私鉄が地下鉄に乗入れ、都心を通って埼玉から神奈川まで走るJRのように、複雑過ぎて何だかわけがわからなくなっている。

ちなみにホテルのコンセントは日本の差込プラグがそのまま使えるもの、三点差し、細い二本差しなど色んなものが併存していた。日本のパソコンはそのまま使えたが、一般的な電化製品は電圧が違うので使えないそうだ。

近道をするためなのか、車同士がすれ違うのがやっという路地へ入っていった。そんな道なので地面は凸凹だし、リキシャや歩行者が多くてスピードは全然出ない。それでも運転手はリキシャや歩行者に注意を促すため、というより、「端へ寄れ!」と主張するため、クラクションを何度も鳴らす。うるさい。だが、二日目ともなると慣れてきて、いちいちドキッとしなくなってきた。

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そんな危険極まりない路地だが、狭いおかげで沿道にある店の様子がよくわかるようになった。ここは鳥屋。もちろん愛玩用ではなく食用だろう。

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タマネギやタロイモや生姜や卵やインスタントラーメンや煙草を売る生活雑貨店。日本でも昭和の頃、各町内に1つはあった〝よろず屋〟だ。平成生まれは知らないだろうが、言うなれば昔のコンビニ。狭い店内なのにきっちり分類されているところ、バラ売りや計り売りというのがGOODだ。

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ミートショップと呼ぶより、ブッチャーと呼ぶのがふさわしい肉屋。客の目の前で肉を捌いている。日本でもショーケースの向こうで肉を切ったり、ミンチにしたり、コロッケを揚げているのは見たことはあるが、ここまで客と距離が近い場所で大胆に包丁を振り上げている肉屋は、昭和40年代生まれの筆者は見たことがない。

犠牲祭(イード・アル=アドハー)のとき、道端で牛や羊を捌いて血や内臓が辺りに散らばるというニュースを見て少し驚いたが、日常的にこういう風景に接していればあまり吃驚することはないのかな。


運転手が少しでも前へ進もうと、クラクションを鳴らしながら突っ込んでいく。ところが、数百メートル程進んだところで通行止めにぶつかった。工事中だったのだ。

店や住居が立て込んでいるため、車をUターンさせるようなスペースはない。結局、そうするしかなかったのだろう、運転手はそのままバックで来た道を戻り始めた。

前や後からリキシャやCNG、時には車までどんどんやってくる。お店や左右の細道から歩行者が出てくる。

運転手はそれを回避しつつ、徐行のようなスピードを維持したまま、確実に後ろへ進んでいく。そのテクニックと、怒りだすわけでもなく普通にやり過ごす歩行者や各車輛の冷静さに舌を巻いた。

お尻から大通りへ出た。真夏の蝉のようにクラクションが鳴り響く。だが、そこでもあっという間に方向転換し、合流する運転手。ダッカで運転すれば世界中どこでも運転できるのは間違いない。

吉本:1289字