地元の福祉と難民の安全

地元の福祉と難民の安全
【Prothom Alo】2017年8月25日以降、ミャンマーで起こった非人間的な残虐行為により、およそ65万5千人のロヒンギャがバングラデシュへと逃れてきた。難民の越境流入は1992年から断続的にあり、全体ではおよそ100万人。難民の大部分はコックスバザール(Cox's Bazar)県テクナフ(Teknaf)郡やウクヒア(Ukhia)郡で暮らす。その内およそ80万人がキャンプに住み、残りは各地へ散らばっている。

ここに避難するロヒンギャはバングラデシュ政府の管理の下、あらゆる種類の救援物資が提供される。彼らには滞在場所があり、飲み水があり、治療を受ける施設がある。十分というわけではないが、トイレさえも設置されている。国連の難民機関(UNHCR)や国際移住機関(IOM)、世界食糧計画(WFP)、世界保健機関(WHO)等の国際機関が支援している。BRAC等、国内外の非政府組織(NGO)もこの一帯で活動する。突然の難民流入は強い影響を及ぼしたが、彼らには配慮がなされている。

バングラデシュ政府は人道的配慮から仮設避難所を提供した。合理的で時勢にかなったこの行動は国内外で称賛を受ける。ロヒンギャを本国に帰還させるため、様々な措置も取られている。だが、この件に関するミャンマーの保守的なスタンスは活動の妨げとなっている。

バングラデシュ国民1億6千万人は、国内に避難するロヒンギャの負担をしなければならない。納税されたお金の一部がこれらの難民に使われている。だが、直接的に大きな負担がかかるのはウクヒアやテクナフの住民だ。2011年の人口調査によると、この地域の人口は50万人にも満たなかった。今、調査を行うと、60万人かもしれない。だが、この60万人は、難民100万人分の圧力に耐える必要がある。この圧力は短期、中期、そして長期的影響がある。地元住民は自らの食料を、疲弊し、病弱で、飢えと渇きに苦しむロヒンギャと分け合っている。また、ロヒンギャに仮設避難所を提供している。ロヒンギャはある程度楽になり、彼らの施設は日ごとに増えている。地元の人々は、ロヒンギャは普通の生活をしてほしいとさえ思っている。

それと同時に、地元住民は一刻も早くこの負担から解放されたいと思っている。彼らはミャンマー当局がロヒンギャをすぐに連れて帰るとは考えていない。ロヒンギャ自身も、最低限の安全と尊厳が保証されなければ帰ろうとしないだろう。だが、すぐ帰還できないにしても、帰還の手続きがまとまることを願っている。圧力はまだウクヒアとテクナフに残っている。この状況に対応する取り組みは急を要する。

私は諮問機関の一員として、これら2郡の人々が直面する問題を突き止めるため、ダッカ(Dhaka)やコックスバザールの関係者と話をした。コックスバザールやウクヒア、テクナフの住民代表、政府職員、市民、そして国際機関やBRACの地域代表者と話をした。

国境に位置するこの地域では、ロヒンギャが到着し始めた当時は作物が豊かに実っていた。小さな水路が灌漑用水として使われた。だが、今ではロヒンギャに場所を提供するため、これらは全て消え失せた。

当初、ロヒンギャは避難場所として、様々な学校やカレッジが与えられた。これらの施設にある家具は多くが損傷し、失われた。今でも、ウクヒア・ディグリーカレッジなど12の教育施設が、ロヒンギャの収容目的に使われている。授業は停止したままだ。児童らは見知らぬ人の中、学校へ来ることに不安を抱いている。学校の出席率は半分以下に落ち込んだ。
運動場は救援物資の配布に使われる。道路は地元住民や外国人、救援物資を運ぶ重車両の行き来で傷んでいる。交通渋滞は通勤の妨げとなり、集落道路のほとんどは悲惨な状態だ。

ロヒンギャのために数千基の管井戸が設置され、その結果地下水面が劇的に低下した。浅い井戸は水が引けず、深い井戸をさらに深くしなければならない。

急激な需要は野菜や魚、肉、必需品価格を押し上げた。闇市場では余った配給物資が安値で売られ、地元商人は赤字を出す。薪はいまだに燃料として使われ続け、森林が消えつつある。象などの動物は絶滅危機にさらされている。保安林や社会林が被害を受けたが、地元住民には一切の補償が提示されない。

地元住民にとって最も大きな被害の一つが、労働市場へのロヒンギャ参入だ。彼らは労働力を低賃金で売る。以前は労働者1人あたりに日給500タカ(682円)が支払われていたが、200~300タカ(273~409円)へと落ち込んだ。援助機関やNGOはロヒンギャキャンプの活動で地元住民を雇っていないとの訴えがあるが、機関側はこの主張を認めていない。

住民代表者によれば、何らかの集団がこの状況を利用して、ロヒンギャを急進化させようとしているという。ロヒンギャはドラッグ取引に関与しているというのだ。地元住民代表者らはトラブルの説明中、自分たちの故郷で疎外されているように感じると、感情をあらわにした。支援の全てがロヒンギャ向けで、地元住民が無視されていると思うのだ。地元住民の精神に深い影響が出ている。これは、政府や救援活動に関与する人に責任がある。

これらの問題の解消は、さほど困難でも、お金がかかるわけでもない。当初はロヒンギャのため、教育施設を使う必要があったかもしれないが、それに代わる手段を手配すべきだ。児童に食物を配るようにすれば、彼らはすぐ教室に戻ってくるだろう。IOMはロヒンギャと地元住民の20万世帯に対し、調理用ガスボンベを提供している。これは環境保全に役立つだろう。農地や森林を失った住民には相応の補償をしなければならない。道路は修復と保守が必要だ。主要道路が4車線化すれば、みんなにとって有益になるだろう。堤防は修復する。大規模植林を実施する必要もある。

ロヒンギャ用医療施設は地元住民にも提供するのが正しい。地元労働市場へのロヒンギャ参入を禁止する必要がある。一定期間は地元の貧困相と中流層に対し、特別手当を支給すべきだ。さらに、あらゆる犯罪は法に照らして平等に扱う。ロヒンギャに対し、意欲的に避難所や支援を提供する地元住民に配慮することで、避難民の安全と安心が成り立つ。

(アリ・イマム・マジュムデル/元閣僚)

Bangladesh News/Prothom Alo Jan 03 2018
http://en.prothomalo.com/opinion/news/168922/Welfare-of-the-locals-security-of-the-refugees
翻訳:長谷川
#バングラデシュ #ニュース #ロヒンギャ #地元住民 #コックスバザール