初めてのダッカ~ベンガル料理~

和食が好きな私は食に関していえばものすごく保守的だ。外国へ行き、食堂やレストランに入っても妻や子どもたちのように変わった食べ物を前に興奮することはなく、なるべく個性のない、無難なものを淡々と食べる。

"米と魚の国"と呼ばれるバングラデシュは少なくとも素材に関しては日本と似ている。だが、青年海外協力隊でバングラデシュにいた後輩のS君は「三食ほぼトルカリ(カレー)で、帰国したとき歯が黄色くなってました」と笑っていたし、ガイドブックには塩や油が多いうえ、一皿の量が多いとある。若い頃ならいざ知らず、新陳代謝が悪いオジサンになってきた昨今、BDDニュースレター5号を作ったとき調べた国民魚ヒルサ(イリッシュ)を食べたいと思うくらいで、他の外国料理同様、ベンガル(バングラデシュ)料理にそんな関心はなかった。


初日、打ち合わせを終えてホテルへ帰った。夕食はホテル内のレストランだ。食べてみたかった国民魚ヒルサのフライとトルカリを頼み、「野菜を摂らなくちゃ、でも生はちょっと」というので火を通した野菜、「主食も必要でしょ」とビリヤニ(牛乳から取る油を使ってご飯と具を炊き込んだもの)とパンを頼んだ。

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ヒルサのフライは小骨が気になるが、臭みのない鯖というか、脂っぽい鱈というか、かなりおいしい。イスラム教徒の多い国なのになぜか製造している国産ビールハンター(これもコクがあっておいしい)との組み合わせは絶妙だ。

ヒルサのトルカリは煮込まれて骨まで柔らかい。小骨を気にすることなくするすると食べられる。ご飯にかけるもよし、パンやナンに付けて食べるもよし、色んな香辛料が混じり合って日本のカレー(ルー)より断然美味しい。

ビリヤリはバングラデシュ産米だろうが、油が混ざってるおかげで思った以上に粘り気があり、かといってそれほど脂っぽくはなく、これまたイケる。

それほど期待や関心がなかったベンガル料理だが、予想以上に美味しくてかなり盛り上がった。これなら滞在中の食事が楽しみだ。

だけど、美味いからって食べ過ぎるとね……

貫禄ある立派なお腹をしたたくさんバングラデシュ人を思い出しながら、私はナプキンで口を拭ったのだった。

吉本:910字