初めてのダッカ~帰り道~

マニクゴンジからの帰り道、フィナンシャルエクスプレス紙のアポ時間が迫っていたため、運転手はスピード上げた。だが、そこは郊外と雖もバングラデシュ、たくさんの車やリキシャ、CNGが道を走っている。だから走り続けることはできず、時々スピードは下がった。

突然近代的な建物が現れた。シャバールニューマーケットとある。そのなかに“OFF CRACK”という名のレストラン&パーティープレイスがあった。ギター型マークの中には“Live Music”とある。ライブハウス兼二次会スペースのようなものか。どんな音楽を奏でるのかとても興味を引かれたが、対向リキシャや前を走るリキシャを追い越す運転手の素早いハンドル裁きで、OFF CRACKはあっという間に後ろに流れていった。

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やけにゆっくり走るトラックがあると思ったら牛と一緒に人が乗っていた。眠っていたり、疲れていたり、遠くを見つめていたり、一様に暗い顔だ。頭の中を♪ドナドナが駆け巡る。

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突然、運転手が叩きつけるようなクラクションを鳴らした、と思ったら、ハイウェイの路肩付近をトラックが逆走してきた。それもかなりのスピードで。これまでリキシャやCNGの逆走はあったが、まさかトラックが来るとは。思わず足を踏ん張り、でも写真だけは撮った。

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途中アニスルがアポ時間変更の電話をかけてくれたので気持ちに余裕はできたが、プロ意識がそうさせるのか、習慣なのか、運転手はひたすら隙間を見つけて前へ前へと進んでいく。上下左右にかなり揺れ、あまり生きた心地はしなかったが、おかげで正午随分過ぎにも関わらず全く空腹は感じなかった。


フィナンシャルエクスプレスのオールドダッカオフィスに着いたのは当初の約束時間より五〇分遅れだった。あらかじめ連絡してあったので焦りはなかったが、車を下りてホッとしたのか空腹を覚えた。そりゃそうだ、もう午後2時近くだもの。


だから、そこでサンドイッチを出されたときは、契約できた嬉しさと、親切心の有難みと、空腹が満たされる幸せと、無事ここに座っている喜びで、思わず涙ぐんでしまいました。

吉本:893字