Vizrt、バングラから撤退

世界最大のソフトウェアベースのメディアソリューション提供企業Vizrt(ノルウェー)は、事業コスト上昇や非効率な役所仕事、治安面の不安を理由に、2017年8月、ダッカ(Dhaka)の事業所を閉鎖することを発表した。

バングラデシュの治安状態がこの数年間で大きく悪化したため、Vizrt経営陣は閉鎖を決定せざるを得なかったと、Vizrtバングラデシュのマームドゥル・ホク・アザド代表取締役は明かした。

「この1年間、ベルゲンのVizrt本社にいる役員は誰一人としてダッカに来ることができませんでした。そのためダッカ事務所の幹部が動かねばならず、運営コストが増加したのです」

閉鎖を決定した背景には、バングラデシュにおける規制の不安定さや事業コストの増大もある。

「Vizrtのような企業がバングラデシュを離れることは、この国にとって大きな損失です」
発足当初から同社との関わてきたアザド氏は話した。

Vizrtは2010年、2007年から事業を行っていた国内企業を買収し、バングラデシュに参入した。同社の年間売上高は約1.5億タカ(2.07億円)だ。

Vizrtバングラデシュは国内技術者45人程度を雇用し、放送業界向けのリアルタイムの3Dグラフィクスや地図、スポーツ分析の可視化、ジャーナリスト向けのツール、スタジオの機械化、メディア資産管理等を提供している。

VizrtはBBCやFox、アルジャジーラといった外国のテレビ局や国内のテレビ局にサービスを提供してきた。アザド氏によれば、FIFAワールドカップの前回大会ではスポーツ分析を提供したという。

「人件費は他の国に比べて高いわけではありませんが、ダッカのビジネスコストは突然跳ね上がりました。このことも株主たちに市場撤退を決めさせる判断に繋がりました」
別の幹部役員は話す。

例えば、政府は昨2015-16会計年度予算で税制度の改定を告示したが、これによりVizrtは突如として500万タカ(693万円)の税金を支払うこととなった。株主たちはこの動きを非常に否定的に受け止めたとアザド氏。

「政府はデジタルバングラデシュ構想を持っているため、ICTをとても重要視しています。しかし企業の妨げとなる悪い官僚制が存在します」

例えば、Vizrtバングラデシュは1年半前にバングラデシュを離れた外国人株主の名前を削除することができなかったという。

「その株主は500タカ(693円)の株を1株持っていただけでした。当局は彼をバングラデシュに連れ戻し、名前を削除するよう言いました。彼の名前はまだ削除されていません」
Vizrtバングラデシュは6千万タカ(8317万円)相当の高性能設備を備えている。

「興味を持つ団体がこの事業を継続したいのであれば、彼らはそのチャンスをものにできます。たとえ政府であっても、この事業所を調査開発事業として経営できます」
アザド氏は補足した。

Vizrtバングラデシュ前代表取締役のモハンマド・モメヌル・イスラム・ミルトン氏によれば、ノルウェーの幹部経営陣は数年前からバングラデシュ事業所を閉鎖したがっていたという。

「ですがバングラデシュ経営陣は、幹部経営陣の考えを変えるアイディアを思いつきました」

Vizrtのバングラデシュからの撤退は、国内のICT業界について間違ったシグナルを発信するだろうとミルトン氏は話した。

VizrtはノルディックキャピタルファンドVIIIが所有する民間企業で、世界40カ所の事業所で約600人が雇用されている。顧客は100カ国以上にいる。

The Daily Star Mar 31 2017
http://www.thedailystar.net/business/global-it-firm-fold-bangladesh-operations-1383922
翻訳:長谷川
#バングラデシュ #ニュース #ICT