なぜ我が子が

なぜ我が子が
ファヒム、ローアン、ムバシェール、そしてニブラス襲撃犯がたどった危険な運命は、若者たちが洗脳され過激派となった場合にどのようにして破壊をもたらす武器になるかを教えてくれる。

6月18日に起こった警察との"銃撃戦"で死亡したファイズラー ファヒム襲撃犯は、マダリプールカレッジの教員を殺害を企てたとして告発されていた。

この18歳の青年はHSC[1]の最中に姿を消し、ヒンズー教徒の教員を殺害するため、マダリプール(Madaripur)からダッカ(Dhaka)に向かった。

6月11日、ファヒム襲撃犯の父親はダッカの警察署に失踪者届を提出したが、見つかったのは死亡した後だった。

息子の早すぎる死にショックを受けたゴラム ファルクさんは、何らかの者たちに息子が洗脳されたと話した。2週間後、我々は2015年12月~2016年2月の間にさらに3人の若者たちが同様に行方不明になっていたことを発見した。彼らはダッカのカフェを襲撃し、20人を殺害したのち、遺体となって発見された。襲撃された死者のほどんどは非ムスリム[2]の外国人だった。

メール サメー ムバシェール襲撃犯とローアン イムティアズ襲撃犯の父親はともに、息子が洗脳されたと話す。行方不明となったのち、父親2人は警察に失踪者届を提出し、息子を探し出す助けを求めたが、徒労に終わった。

ローアン、ムバシェール襲撃犯はサンダーボルト作戦[3]によって死亡し、彼らの写真が公開された時点で初めて、父親たちは行方不明だった息子の身元を確認できた。

グルシャン(Gulshan)のホーリーアルチザンベーカリーを襲った一人にニブラス襲撃犯がいる。友人たちは彼の急激な変化に気づいて驚いた。マレーシア大学の学生であった彼が過激派になるなど、友人たちには想像もできなかった。大学を修了することなく彼はマレーシアから故郷に戻った。家族はそれ以前に、彼の失踪を警察に知らせていた。 

これらの若者たちは以前、誰一人として過激な宗教思想を持っていなかったように見えるが、ごく最近、洗脳を受けて変わってしまったのだ。

グルシャンのカフェ襲撃に参加したローアン、ムバシェル、ニブラス襲撃犯は裕福な家庭の出だ。彼らは素晴らしい学生でもあった。お金にも困っておらず、卑劣な犯罪に利用されるはずがなかった。それでは、彼らはなぜ個人的な恨みもない人々を殺害するという人生のリスクを冒したのだろうか。

メディアが出しているインテリジェンスレポートによると、洗脳された若者たちは計画的に祖国を去り、過激派集団に加わるという。彼らは国内や国外で、複雑な火器の使い方や殺害の実行方法についての訓練を受ける。そして彼らは自らの命をためらうことなく犠牲にするよう洗脳される。彼らはイスラム教を批判していると伝えられる非ムスリムや自由主義者の殺害により、イスラム教に貢献できると確信しているという。

この現在の状況を見て私たちは、数多くの自問を行い、彼らの持つ答えを見出す必要がある。

メディア報道によると、行方不明の若者たちはまだ存在し、正確な人数は分かっていないという。両親には心当たりはあるのだろうか。警察に我が子の失踪を知らせたのだろうか。警察は失踪した若者たちを取り戻すために何を行っているのだろうか。

私たちは十代の若者たちの日常生活を知っているだろうか。彼らはどこへ行き、誰と会うのだろう。彼らはどんなものを読むのだろう。私たちは彼らを正しく理解し、心の中に過激思想が育っていた場合、それを取り除けるほどの十分な時間を取れているだろうか。家や学校、モスクで、若者たちは歪められた宗教観を教えられてはいないだろうか。

例えて言うなら十代の若者たちは粘土であり、どのような形にもなりうる。過激派集団が若者たちを狙い、容易に過激派へと変えてしまえるのはこのためだ。

警察は若者たちとの適切な雰囲気づくりにおいて非常に強い役割を果たすべきだ。若者を狙うような者たちには鉄槌を下す必要がある。

しかし、過激主義は私たちの社会に深く根付いているため、警察単独では過激主義と闘えないかもしれない。私たちにもその責任があるのだ。

私たちは親として迫りくる危険に気づき、社会を変えるために声を挙げなければならない。さもなくば私たちはファヒム、ローアン、ムバシェール、ニブラス襲撃犯の両親のような苦悶に苛まれるかもしれない。

もしも我が子が人ではない怪物のような所業を行った際には、ローアン、ムバシェール襲撃犯の父親たちのように、国に対して謝罪しなければならないかもしれない。

両親にとって、死亡したテロリストとして息子の遺体を運ぶ以上に、心を痛めることはない。

[1]Higher Secondary school Certificate=後期中等教育(高校)終了時に行われる国家試験で、合格により大学受験の受験資格を得る
[2]イスラム教徒
[3]人質をカフェから救出するため、陸軍主導の部隊が実施した作戦

The Daily Star July 06 2016
http://www.thedailystar.net/dhaka-attack/news-analysis-why-disgraceful-death-our-boys-1250770
翻訳:ハセガワ

#バングラデシュ #ニュース #ダッカ人質事件