住宅、さらに安く

住宅、さらに安く
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わずか4~5年前、ダッカの低~中所得世帯の多くが不動産所有を望み、お金のかかる"賃貸の罠"から脱出するとは想像もつかなかった。

今やこの夢は、多くの人々にとって手の届く場所にある。

ミルプール(Mirpu)のあるアパートは5年ほど前、1平方フィート(0.093平方メートル)当たり5千~6千タカ(6533~7840円)で販売されていたが、現在では3500~4500タカ(4533~5880円)で販売されている。バングラデシュ不動産・住宅協会(REHAB)のサルダール ムド アミン副会長は話す。

同様にダンモンディ(Dhanmondi)のあるアパートは4年前、平方フィート当たり2万2千タカ(2万8746円)をピークに現在では1万タカ(1万3066円)まで下がった。他の地域でも価格は低下している。

アパートの価格は2011~12年をピークに、ここ数年で2~30%低下した。大手住宅開発業者シェルテックのトーフィク M セラジ社長は話す。

不動産市場におけるこの反発は、2000年以来、不動産業者らが需要において安定した成長を記録した後にやってきた。

新たに創られた富や購買力向上を背景に、人々は土地やアパートを買い求めるようになり、収益が不動産部門に流入した。

2001年から12年にかけて、不動産の需要上昇に引き寄せられた多数の会社が商談の調印を行った。結果として所有者から土地を確保する競争が激化した。この状況は不動産所有者により大きな影響を与え、所有者は自身の土地に建設予定の複数階建ての建物から、より多くの部屋を安く手に入れようとしたのである。

「不公平な競争が始まりました。土地所有者らは非現実的な不動産の持分を主張し、そのために不動産価格は最高潮に達しました」セラジ氏は言う。

同時に非現実的な競争のため、アパートの供給は需要を超過したとセラジ氏は言う。

アミン氏は例を挙げる。

2009年、住宅開発業者はシューラパラ(Shewrapara)の土地を70対30の比率で得た。つまり土地所有者がその土地に建てられたアパートの30%を得られるという事だ。

2012年にはこの比率は50対50まで上がった。しかも開発業者は土地所有者に対し、1千万タカ(1306万円)を事前に支払わなければならなかったとアミン氏は話す。

新規参入者の多くは高額なプロジェクトを引き受けていたが、それでも多くが売れたと業界各社は話す。

だが断続的な政治的不安定や銀行貸し付けの引き締め、株式市場の低迷、新規建物へのガス接続供給に対する政府の無関心により、間もなくバブルは弾けた。

REHABのデータによると2014年、アパートの売り上げはどん底の1749室を記録した。2011年には2589室を販売していた。

同じくREHABによれば、2014年のアパートの売れ残りは、2010年の3018室から4倍の1万2185室になった。

だが2015年の下半期からはシナリオが変わった。価格の反発、住宅ローンの金利低下、政治的安定性の回復もあって、住宅市場の見込みバイヤーを引き寄せるようになった。

不動産部門は不調からゆっくりと回復しているとセラジ氏はいう。

不動産業者や銀行家によると、住宅ローンの金利は数年前の17%からわずか9%へ低下したという。

貯金や定期預金のリターン低下を受けた投資機会の不足や株式市場の低迷は、多くの市民に住宅部門へ目を向けさせることになった。もっとも古くからある不動産業者の一つイースタンハウジングのマーケティング担当モハマド ファラドゥッザマン氏は話す。

REHABは2015年の売り上げをまだまとめ終えていない。

ポリシーリサーチ・インスティテュートのアーサン H マンスール理事によると、住宅市場の主要問題は住宅コストとリターンの不釣り合いであるという。

住宅の価格低下により、この不釣り合いは小さくなりつつある。

「アパートの価格は実質半額にまで低下しました」
マンスール氏は言う。

収入の増加と金利の低下が合わさり、アパートはより手が届きやすいものになった。

「これは良い事です。住宅は昨日よりも今日の方がより買い求めやすくなっています」
マンスール氏は言う。マンスール氏は以前国際通貨基金(IMF)の経済学者だった。

値段は落ちてきたが、高いままだ。大きな価格反発は市場が機能していることを示している。

「いくらか実質的な調整があるでしょう。住宅部門が方向転換するには1~2年はかかります。建設業者たちは2008年から12年にかけてとても多く稼ぎました。それ以前には稼げなかったほどに」
銀行や金融機関がさらに金利を削減すれば、住宅部門は加速するとマンスール氏はいう。
「それがこの部門にとって最大の起爆剤となるでしょう」

政府は担保ベースの債券市場を開発すべきだとマンスール氏は提案する。
「工業国の人々の多数が自分の家を持っているのは、これが主な理由なのです」

マンスール氏によると、これらの国の多くでは担保ローンの利子支払いは課税控除になっているという。
「これにより、住宅供給が推進されます」

何よりも、ラジダニ・ウンナヤン・カルトリパッカ(RAJUK)は住宅の領分から離脱するべきだ。
「RAJUKは規制役を果たすべきであり、市場に入るべきなのです」
マンスール氏は言う。

ノンバンク金融機関バングラデシュ産業促進開発会社のモミヌル イスラム社長によると、バングラデシュには住宅金融が成長する大きな機会があるという。

毎年およそ400~500億タカ(523~653億円)が新規の住宅ローンとして貸し出されているが、未払いの住宅ローンは国内総生産(GDP)の3.5%に相当する。

「これは非常に低い値です。先進国では、住宅ローンはGDPの70~100%ほどになります。マレーシアではGDPの40~50%、インドではGDPの11%です」

現在の住宅部門はごく一部の人にしか提供できていないとマンスール氏は言う。
「国内のより多くの人に提供できるよう、我々は確実に新しいモデルを開発する必要があります」

ダッカ(Dhaka)やチッタゴン(Chittagong)を離れ、コミラ(Comilla)やマイメンシン(Mymensingh)、ボグラ(Bogra)、クルナ(Khulna)、ジェソール(Jessore)といった都市に向かう住宅開発業者業者もいる。

「これをさらに発展させる必要があります。住宅開発業者が消費者の基本的必要性に沿ってアパートを建てれば、彼らの商品に対する需要は強く保たれるでしょう。そのため市場では、この類の非持続性を見ることにはならないでしょう」

The Daily Star Aug 08 2016
http://www.thedailystar.net/business/home-buying-much-cheaper-now-1265983
翻訳:長谷川
#バングラデシュ #ニュース #住宅