行動する者に障害なし

行動する者に障害なし
2008字

多くの盲目の息子たちにとり、人生は親族の介護の中で殆ど非生産的なものとなる。だがタンガイル(Tangail)県デルドゥアー(Delduar)郡モンゴロール村のマスド ミアさん(35)は決意と粘り強さで、盲目が自立や成功にとって何の障壁にもならないことを証明してみせた。

マスドさんが2歳で腸チフスによって失明した際、父親で商人のサマド ミアさんは治療にあらゆる手を尽くした。地元の医者の診察を受けさせた後、息子をマイメンシン(Mymensingh)やダッカ(Dhaka)へ連れていき、視力回復に望みを託した。しかしその努力は実らなかった。

「息子の視力を回復させるため私は最善を尽くしましたが、上手くいきませんでした。その当時治療に50万タカ(63.8万円)かかり、私が唯一持っていた土地を売り払って資金に当てました」

盲目が永続的なものだとわかったマスドさんは子供時代、彼にとっての世界の大部分を占める自宅近くで過ごした。

「私は他の3人の子どもの世話や家庭の切り盛りでとても忙しかった。マスドに十分に気を配れなかったことが残念でなりません」
母親のマスマ アクテルさんはいう。

1992年、当時11歳のマスドさんはタンガイル町のヴィヴェカナダスクールの1年生に入学した。マスドさんは点字のテキストを用いて6年生まで勉強し、社会福祉局の厚意で学校の寄宿舎で暮らしていた。
「本当はあそこでの勉強は快適ではありませんでした」
マスドさんは昔を思い出す。

その後、家でうっとうしい日々が続いた。6人家族全員を養うために父親が苦労していることを知って苛立ちを感じた。
「私は家族のために何かをしなけらばならないと決意しました」

何日か後、マスドさんはガジプール(Gazipur)県トンギ(Tongi)にある障がい者訓練センターに入学を志願し、6ヶ月間手工芸を学んだ。だがマスドさんは満足しなかった。

「私はぶらぶらしないと決めて、家に戻りました。牛の飼育を始め、村の学校の前に小さな店を開きました」

マスドさんは父親の耕作作業も手伝い始めた。握力が弱い父親では難しかった小型トラクターのエンジンの始動を上手にこなした。燃料補給の仕方を学び、家々を回ってサービスに対する料金を集金した。

2006年、マスドさんはナトール県ボライグラム郡出身のレカ ベグムさんと結婚した。1年後、娘のアルパさんが生まれた。
「結婚した後、家族の支出は増えました。より良い収入が必要になりました」

マスドさんは牛を全て売り払い、近所の人から借金をして弟のソヘル ラナさんをサウジアラビアに行かせた。その後数年間、ソヘルさんからの送金が家族を支えた。さらにソヘルさんはマスドさんが目の移植手術を受けられるようにと、余分に送金を行った。しかしマスドさんは手術を考えなかった。

代わりにマスドさんはそのお金を使って、現在の稼業である養鶏農場を立ち上げた。2010年までにマスドさんは1500羽の雌鶏を飼育した。補助として若者を雇ったが、餌やりや卵の回収、ワクチン接種など、作業の多くはマスドさん自身が行った。だが道のりは易しいものではなかった。

鳥インフルエンザで鶏が死んでしまったことで、最初の2年間は赤字だった。だがマスドさんは諦めず、より熱心に取り組んだ。3年目には黒字を出し、その先も黒字が続いた。現在マスドさんは養鶏農場から月に10~15万タカ(12.7万~19.1万円)の収入を得る。

収入が十分にあるおかげで、マスドさんは毎月1万タカ(1.27万円)を妹のサルマさんに仕送りできる。サルマさんは夫に先立たれ、タンガイルで娘と共に暮らしている。

近所に住む野菜農家のミル カビルさんによると、マスドさんが助けているのは妹のサルマさんだけではないという。
「多くの村人が困った時にマスドさんの所へお金を借りに行きます。私の知る限り、彼は一切断っていません」

地元の学校教師レザウル カリムさんも同様に感銘を受けている。
「盲目の人の多くは家族にとっての負担となっていますが、マスドさんは例外です。彼の人生の奮闘と成功の物語は他の人々に元気を与えるでしょう」

「目が見えないことに悔いはありません。私には2つの夢があります。1つ目は今4年生の娘をしっかり教育すること、2つ目は大きな牧場を建てることです」

「夫の目が見えないことは悲しくありません。彼は他の人たちと同じように何でもします。そして私と娘を愛してくれます」
妻のレカさんはいう。

マスドさんから障害を持った人たちへのアドバイスはこうだ。
「他の人に世話をしてもらうために何もせず座っているよりも、自立するために何かをやってみることです」

The Daily Star Aug 18 2016
http://www.thedailystar.net/frontpage/doer-has-no-barrier-1271479
翻訳:長谷川

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