経済成長と貧困減少だけでは栄養不良問題を解決できない。もしそうであればこの25年間、かなりの経済成長と急速な貧困率減少を遂げたバングラデシュは今、栄養問題に直面していないはずだ。
貧困や不平等、飢餓、栄養分野に幅広い経験を持つ開発経済学者のSR オスマニ教授は、今も付きまとう栄養不良問題を進展させるため、女性の地位向上や母子の健康管理への投資を強調した。
「およそ3人に1人の赤ちゃんが低体重で誕生しています。その中の一部は早くに死亡し、死ななかったうちの大部分も栄養不良のまま育ちます」
教授は英国北アイルランドのアルスター大学で教鞭をとっている。
「若者や未成年の母親の多くが苦しめられている栄養不足は、最終的には次の世代に負担をかけることになります」
オスマニ教授はデイリースターのインタビューで話した。
これらの母親の多くは自身も低体重児として誕生し、栄養不良の状態で育ってきた。少女たちの多くは早期に結婚し、自分自身が成長中である10代のうちに出産する。結果、妊娠中、母親と胎児が栄養を奪い合うことになる。この勝負には殆ど変わらず母親が勝利し、胎児は栄養を奪われてしまう。この状況と母親の栄養不良の歴史が合わさり、低体重児が出産されるとオスマニ教授は話す。
母親の栄養不良の歴史や10代での結婚、不適切な食事に対処しない限り、経済成長や食料生産の増加が栄養不良の問題を解消することはないとオスマニ教授は指摘する。
そのための最良のやり方は母子の健康管理を支援し、10代での結婚に反対する大規模なキャンペーンを立ち上げることであるという。
「バングラデシュにはこの規模のキャンペーンを成功させた実績があります。例えば人口コントロールキャンペーンや予防接種キャンぺーンなどです。我々はこれらの事例から閃きを得るべきです」
オスマニ教授は世界食糧プログラムに委任された報告書"バングラデシュにおける食糧安全と栄養に関する戦略的総括"の発表に立ち会うため、先日ダッカを訪れた。
オスマニ教授は報告の筆頭筆者だ。バングラデシュは人口の4分の1に当たる4千万人という驚くほど多くの国民が食糧不足で飢え、国民の大部分は十分に栄養がある多様な食事を得られていないと報告書は指摘する。
さらに今もなお3人に1人以上の子どもが発育不良で、深刻な栄養不良は長期間にわたって大幅な減少が見られていないと指摘する。
国内初のシンクタンク、バングラデシュ開発研究所(BIDS)の初代研究者であるオスマニ教授は、ここ20年間で児童の発育不良率が55%から36%に低下したという事実を称賛したものの、目標の達成のため、低下の速さがまだ十分ではないと主張する。
「発育不良率が今のペースで減少を続けた場合、バングラデシュは世界保健機関(WHO)が設定した2025年に、世界的な栄養目標を達成できない可能性があります」
目標達成のため、発育不良の減少率を現在の年2.5%から2倍にする必要があるとオスマニ教授はいう。
栄養不良の兆候は多くの面で現れる。例えば年齢不相応な低体重や低身長(発育不良)、身長に対しての極端な痩せ(衰弱)、ビタミンやミネラルの欠乏(微量栄養素の欠乏)、そして肥満や体重超過もだ。
発育不良は栄養不良の第一の兆候で、食べ物不足によって引き起こされるとともに、幼少期や誕生前に繰り返し受けた影響によっても引き起こされる。母親が栄養不良であった場合、成長中の胎児も栄養不良となるためだ。
衰弱(身長に比べて低体重)は多くの場合、直近に深刻な体重減少があったことを示す。これはしばしば深刻な飢餓や重病(あるいはその両方)と関連付けられる。
栄養不良問題は不適切な子どもの世話と、食事習慣が組み合わさって成り立つとオスマニ教授は話す。教授はアルスター大学に入る前、ヘルシンキにある世界開発経済研究所でノーベル賞受賞者のアマルティア セン氏の監督の下、研究を行っていた。
新生児のおよそ半数は生後6ヶ月の間母乳だけでは育てられておらず、6ヶ月以降はその多くが適切な量や質、頻度の補助食品を得られていない。
オスマニ教授は胎児妊娠から2歳に至るまでの最初の1千日間は、特に気を付けて子どもの世話をする重要性を強調した。この期間中の栄養面の出来事は、その後の身体や認識能力の発達に大規模な影響をもたらすためだ。
「栄養シナリオを本当に改善したいならば、我々はこの期間を重視する必要があります」
ロンドンスクールオブエコノミクスで博士号を受けたオスマニ教授は、バングラデシュでは多くのセーフティネットの枠組みが機能しているが、新生児を直接の対象としているものは一つもないと主張した。
さらにもっと多様な食事をとる必要性も強調した。
沢山食べること自体は適切な栄養状況にはつながらず、バランスのとれた食事が必要なのだとオスマニ教授はいう。
「過去20年間、穀物への過度の依存にほとんど変化が無いことが懸念事項です。我々が摂取するエネルギーのうち、実に77%が穀物からの物なのです。女性や子どもの福祉に関連した対策を取るとともに、食事を多様化する必要があります」
オスマニ氏はこのように結論付けた。
バングラデシュ/The Daily Star Nov 08 2016
http://www.thedailystar.net/business/high-economic-growth-cant-alone-fight-undernutrition-1311343
翻訳:長谷川
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