バングラデシュ北部、ディナジプール(Dinajpur)県ボチャンゴンジ(Bochanganj)郡ジョソール政府小学校3学年アブダル ラシッドさんは、毎朝いつものように学校へ行く準備をする。彼は学校に間に合うように準備するし、宿題は済んでいる。この日課は多くの小学生と同じだろう。同級生と少しだけ違うとすれば、彼が62歳ということだけだ。
「最初に校長に入学したいと言ったとき、年齢を理由に断られました。しかし私は読むことを学びたかった。私は同級生の子どもたちと一緒に同じ宿題をすると、校長を説得しました」
アブダルさんは2年前を振り返る。
農家として過ごした彼の、人生初めての学校だった。貧困にあえぐ家族に生まれ、若い頃は勉強する機会はなかった。村には学校すらなかった。教育を受けずに育ったアブダルさんは、基本的な読み書きすらできなかった。
「私は読み書きすることを全く理解できないまま、月日だけが過ぎていきました」
2012年に資金不足に瀕した。
「農家の資金不足は珍しいことではありません。時が経つにつれ、農作物による損失を被っていきました。そして2012年、新しい水田作物を導入するため、40デシマル*1の土地を質に入れ、資金調達することを決めたのです」
アブダルさんはそうした。そして作物を売った後、お金を返済するため質屋に行ったとき、質屋は「土地は売った」といった。
「人生最大の失敗でした。遅きに失しましたが、文盲では駄目だと理解しました。学校へ行こうと決めました」
同級生がみんな8歳の教室に入る時、アブダルさんは緊張したという。
「落ち着くまで数ヶ月かかりました。最初はベンガル語と英語のアルファベットを理解するのがとても難しかったです」
先生が他の子たちのようにズボンをはくよう指示するまで、彼はルンギ*2をはいて学校へ通った。
「私は買いました。そして人生で初めて、ズボンをはくという経験をしました」
アブダルさんは微笑む。
ずっと若い同級生たちとどう関係を作るかという問題もあった。
「最初、アブダルさんがクラスメイトになったとき、私たちは人見知りをしました。でも今は普通に接しています。アブダルさんはクラスメイトで友人です」
10歳の同級生ジャルナ ラニさんはいう。
「同級生の子どもたちは私によくしてくれます」
アブダルさんはいう。
「私たちはお互いにボンドゥと呼び合います。年齢は違いますが、同じ勉強をする友達です」
ベンガル語でボンドゥとは友達を意味する。
アブダルさんと他の子たちとの活動に違いはない。体育の授業のときは同級生と同じように体を動かす。午後には毎日コーチングセンターへ通う。
最初こそ不安はあったが、学業は順調に進んでいる。
「アブダルさんは全科目の試験をうまくこなしています。また他の児童たちといい関係を作っています」
アニル チャンドラ ロイ校長はいう。
「私は今、読み書きができます。これは最大の喜びです。私は決めました。初等教育修了試験を受けることを」
アブダルさんは誇らしげにいう。
だが初等教育修了試験を受けるには年齢制限がある。
「アブダル ラシッドさんの熱意にとても感銘を受けています。私たちは年齢に関わらず、修了試験を受けることができるよう、特別な要請書を省庁に送ることができます」
県初等教育局の役員サイフズ ザーマン氏は話す。
もちろん60代の人生には普通の生活がある。2001年、突然の病気で亡くなったが奥さんとの間に娘がいて、彼女の学業のサポートが必要だ。HSC(高等学校資格証明試験)を控えた孫娘もいる。
人生後期に入っても学びたいというアブダル ラシッドさんの決断や情熱はジョソール村や近隣村を鼓舞している。彼の例から多くの親たちは教育を受ける恩恵をより理解するようになり、子どもたちがまだ幼いうちから実施するようになった。
*1デシマルは1/100エーカー。約0.4アール。40平方メートル。
*2民族衣装の一種で男性の腰布。
The Daily Star Nov 14 2016
http://www.thedailystar.net/frontpage/never-too-old-learn-1314292
翻訳:吉本
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