遠隔地の救急車

遠隔地の救急車
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2年前、ラジシャヒ管区ナオガオン(Naogaon)県の僻村サラスワティプール(Saraswatipur)村のラウシャン アラさんが初めて妊娠した時、彼女は妊産婦検診を全く受けなかった。

アラさんが10キロほど離れたモハデブプール(Mohadevpur)の郡健康センターに妊産婦検診を受けに行かなかったのは、認識不足だったからではない。1時間もリキシャに揺られることを恐れていたのだ。

「彼女を健康センターへ連れていくためにリキシャを雇うのはとても大変でした。このあたりではいつもリキシャを使えるわけではないからです」
夫のシラジュル イスラムさんはいう。

夜になると交通手段がほとんどなくなるため、状況はさらに悪くなった。

「ですがそんな日々は終わりました。今、この村には救急車があります」
シラジュルさんはいう。

最近までモハデブプール郡に勤めていた郡行政官のAKM タジキル ウッザマン氏は、サラスワティプール村のような僻村にユニークな救急車サービスを導入した功績を称えられるべき人物だ。

妊娠した女性の苦しみを和らげようと、タジキル氏はバッテリー式イージーバイク(三輪自動車)を救急車に改造するというアイデアを思いついた。この救急車の屋根にはサイレンが、キャビンの中には酸素ボンベがあり、サイドシートでは患者が楽に横になることができ、車後部のサイドシートでは患者の付添人が2~3人座ることができる。

車体には携帯電話番号が書かれ、電話でその救急車を呼び出すことができる。

今年の1月11日、ラジシャヒ管区のヘラルディン アーメド行政長はこのサービスのお披露目式を行った。

「患者の方々の苦しみを考え、そこそこの費用に収まるような解決策を見出そうとしました。アイデアをビムプールユニオンのラムプロサド バドラ議員など、他の方々と共有した時、皆が前向きに支援してくれました」
タジキルウッザマン氏は電話でデイリースターに話した。

タジキルウッザマン氏はイージーバイク業者や地元の旋盤加工業者に掛け合い、3ヶ月で車両が開発された。

「費用はわずか16万タカ(20万円)でした。救急車には"マトリセバ"と名付けました」

マトリセバは現在ビムプールユニオンのバガッチャラ診療所に配備されている。ユニオン内誰もが、電話一本で玄関先に呼び出せる。

「マトリセバのお陰で、リキシャで1時間かかった道のりが20分にまで短縮されました」
シラジュルさんはいう。

毎回の利用料金も固定されている。日中は1回100タカ(128円)、日没後は1回150タカ(192円)だ。

現在、モハデブプール郡の8つのユニオンには8台の救急車がある。

タジキルウッザマン氏のアイデアに恩恵を受けているのはビムプールの人々だけではない。

ラジシャヒ管区パブナ(Pabna)県湿地帯のチャトモハール(Chatmohar)郡パタイラット(Pathailhat)村の人たちも、今では自分たちの救急車を持っている。

病気に苦しむ9歳のマリアム カトゥンさんの状態が悪化した時、父親はただ電話で救急車を呼ぶだけでよかった。3分後にはキャビン付きのバッテリー式イージーバイクが玄関先に現れ、マリアムさんは郡健康センターに15分で到着した。

救急車がこれほど早くマリアムさんの家に来られたのは、この救急車がパタイラットから500メートルの所にあるムルグラム(Mulgram)ユニオン議会の事務所に置かれていたからだ。

パブナの遠隔地から患者を搬送するため、チャトモハール郡の11ユニオン議会は6月11日にこの救急車サービスを導入した。

「湿地帯のチャトモハール郡の遠隔地には救急車サービスが不足しており、妊娠女性や子どもを中心とした患者の方々は時間通りに病院に着けないことが度々あります。病院への到着が遅れることで症状が致命的になることもあります」
チャトモハール郡のショヘリ ライラ行政官はデイリースターに話した。

ショヘリ行政官によると、チャトモハール郡内11ユニオン議会に属する244の村の28万7千人の村人が救急車サービスを利用しているという。

チャトモハールの救急車改造費用は1台につき20万タカ(25万円)だった。ビムプールとは異なり、酸素ボンベはまだ備え付けられていない。

救急車はチャトモハールのユニオン議会事務所に置かれ、ユニオン内の"チョウキダース(村の警察)"が運転に当たるとショヘリ行政官はいう。

タジキル ウッザマン氏によると、資金は地方行政支援プロジェクト(LGSP)から出たという。

資金不足のためにモハデブプール郡内の他のユニオンには同様のサービスを導入できないとタジキル ウッザマン氏。

だがチャトモハールのように、他県の郡行政がこのアイデアを拾い上げた。

現在までにジョイプールハット(Joypurhat)県、ナオガオン(Naogaon)県、ナトール(Natore)県、パブナ(Pabna)県の複数の郡下にある26ユニオンで、このような遠隔地向けの特別救急車が導入されている。

ラウシャン アラさんと同様、26ユニオンの女性は現在このサービスの恩恵を得ている。ビムプールユニオンのラムプロサド バドラ議長は話す。

この試みは遠隔地の多くの村人たちの健康管理アクセスを改善する助けとなったが、救急車サービスの継続性を懸念している人もいる。

「良い試みは、適切な監視を確保しなければ失敗するかもしれません」
チャトモハール郡バハドゥルプール(Bahadurpur)村の住民シャヒン ラーマンさんはいう。

だがチャトモハール郡議会のハサドゥル イスラム議長は、郡内の全ユニオンの議長や役員がサービスを監視し、サービスが妨害されないよう、ただちに必要な措置を講じると断言した。

The Daily Star Aug 25 2016
http://www.thedailystar.net/frontpage/ambulance-the-poor-1275028
翻訳:長谷川

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