バングラデシュの成長物語

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外国人17人の命を奪った過激派によるホーリーアルチザンベーカリー襲撃事件は、突如としてバングラデシュを"ビジネスをするには恐ろしい場所"へと変貌させた。

7月1日に起こったこの事件で、外国人たちがこの先バングラデシュを訪れたり、バングラデシュで仕事を続けてくれるかに疑問が湧き上がった。

そのような不穏な空気にも拘らず、政府が襲撃事件で取った過激派の活発化に立ち向かう厳しい対応のお陰で、外国企業の幹部たちはバングラデシュへの来訪を続けた。

そのうちの一人が花形銀行家で、スタンダード・チャータード銀行のグループ経営責任者ビル ウィンターズ氏だ。ウィンターズ氏は火曜日にバングラデシュを訪問し、国内市場に明るいメッセージをもたらした。

「政府の厳しい対応には満足しています。私はこの問題に容易な解決策がないことを知っています。これは世界的な現象なのです」
ウィンターズ氏がデイリースターのインタビューにこたえた。

「他の市場の多くと同じように、バングラデシュにおける懸念事項でもあります」

「人的コストは莫大です。経済的コストは巨大です」

国内経済や国際経済に対する最も破滅的な影響を和らげるため、取れる手段があるとウィンターズ氏は言う。

ウィンターズ氏は昨年6月、新たな経営責任者としてスタンダード・チャータード銀行に加入した。銀行はロンドンに拠点を持つが、アジアやアフリカに焦点を置いている。

ウィンターズ氏は自身がバングラデシュに詳しいことや、この国が過去数十年間、特にこの数年で成し遂げてきた成長に感動したと話す。

スタンダード・チャータード・バングラデシュは強力な国内銀行となり、取引や投資、輸出を促進すとともに、国内に資本をもたらしているという。

南アジアは地政的な緊張には概ね囚われておらず、ある種のオアシスだ。良い政治や輸入商品価格の低下が一因で、南アジア経済は強いままでいた。

「バングラデシュのビジネスは非常に強いままです。文句なしです。我々のチームはより良いやり方にフォーカスしており、そして我々が行っている投資に基づいてより良くやれています」

南アジアにおいて銀行はバングラデシュやパキスタン、ネパールには強い地位を保っているものの、インドでは難しいという。

「ですが我々の計画は変わりません。クラス最高のサービス提供者となるため、テクノロジーや人に投資し、リターンの低い地域から高い地域へと少しずつ資本を移転させていきます」

スタンダード・チャータード銀行はアラブ首長国連邦(UAE)やクウェート、カタールといった国々ではとても地位を高めることができたとウィンターズ氏は話す。ウィンターズ氏は銀行に対し、素晴らしい地位を提供したアフリカを称賛した。

またバングラデシュ銀行が管理において非常に熟練していると話す。
「一つの組織として、彼らはとても熟練しています。この国において管理の欠点は無いと考えます」
だが改善の余地は常に存在すると付け加えた。

バングラデシュ国営銀行の健康状態を尋ねられたときウィンターズ氏は、世界中の数々の市場で"銀行に対し、政府がかなり高いレベルの干渉を行う時に事故が起こる傾向"を見てきたと話した。

金融危機の際、アメリカ政府の干渉は国内の住宅市場に対する大規模な補助金という形態をとった。

「おそらくはこの補助金の結果、住宅市場には金融史上最大のバブルが生まれました。バブルは世界の至る所に桁外れの苦痛を引き起こしました」

「私は市場に干渉しない政府をとても強く支持します。政府が市場に足を踏み入れた時、悪いことが起こる傾向があるからです」

ウィンターズ氏はスタンダード・チャータード銀行の実権を握った後、銀行の財務的な強さを確保するため積極的な戦略を示し、資本リスクを振り払うために株主から十分な資本を調達し、さらにバランスシートを清浄化するための手立てを取り始めた。

銀行はこの1年で大きく発展し、2016年の上半期には利益性を取り戻した。
「我々の収入は少しずつですが増えています。支出やリスクはコントロールされ、投資は果実を実らせつつあります。我々にはとても明るい未来があります」

「我々は正しく理解すること(getting it right)を重視しています。バングラデシュには高い顧客満足度がある強い市場があり、そのためバングラデシュ以上を探す必要がありません」

だがスタンダード・チャータード銀行がリスクを取り、それ自体が危険な市場での営業を行うとウィンターズ氏は話す。
「少しの間、通常よりも幾分か高い水準で不良債権を抱えると予測しています。ですがそれはコントロール下にあります」

銀行はより効率的になる必要があるとウィンターズ氏。ウィンターズ氏は2018年までに支出を30億ドル(3050億円)削減する目標を立てており、その目標は半ば完了しているという。その大部分は管理職の削減によるものだ。

「節約した30億ドルは全て銀行ビジネスに投資還元します。クラス最高のデジタル銀行となるため、この投資の半分はテクノロジーに向けます」

スタンダード・チャータード銀行は既に、モバイルバンキングやオンラインバンキングでは一番だという。
「最前線だけではなく、プロセスの全体を自動化する必要があります」

スタンダード・チャータード銀行は新たな可能性に投資を行っており、バングラデシュはこの新しい投資の一定量をすでに受け取ったという。

「我々は支店や法人顧客数の増加を望んでいます。我々はここでテクノロジーに投資をしています。我々はバングラデシュにおけるデジタルバンキングの最先端であり続けたいのです」

スタンダード・チャータード銀行がバングラデシュに強いビジネスを持ち、成長しつつある人口の中で高い顧客満足度を得ているという。
「その一部となれたことに、とても満足しています」

バングラデシュはいくつかの点で、スタンダード・チャータード銀行にとってのロールモデルであるとウィンターズ氏。
「この国は中核市場なのです」

インタビューに同席したスタンダード・チャータード銀行ASEAN・南アジア地域支部のアジャイ カンワルCEOは、バングラデシュが銀行にとり、市場のトップ10に名を連ねても不思議ではないと話す。
「バングラデシュは我々にとってより強力な投資先になりつつあります」

スタンダード・チャータード銀行は国内の経済やビジネスに便宜を図るだけでなく、世界のビジネスや資本、投資家をバングラデシュに上手く送り込んでいる。ウィンターズ氏によれば、バングラデシュに入ってくる資本の半分はスタンダード・チャータード銀行を介してのものだという。
「我々は国内資本投資の大規模な後援者で、国外輸出の大規模な後援者なのです」

中国は自国の超過製造力や資本をバングラデシュを始めとした他国に移転させる計画を立てているとウィンターズ氏。

中国がバングラデシュやパキスタン、UAE、ナイジェリア、ケニアでのインフラ整備プロジェクトに資金提供を試みるならば、彼らにぴったりのパートナーはスタンダード・チャータード銀行だ。世界で2番目に大きい経済圏で大規模操業を行い、中国が投資を行おうとする国でも操業しているからだ。

「我々はこれらの類の資金提供に非常に適した斡旋人です。これは我々が行っている事そのものだからです」

最も離れた場所にいる人々も携帯電話を用いてデジタル経済へのアクセスを手に入れつつあり、そのためスタンダード・チャータード銀行は、銀行に口座を持てない人の大部分を銀行業務に取り込める機会があるとウィンターズ氏。

さらに国内企業が低費用の資金の恩恵を受けるため、外部財源から借り入れすることは、バングラデシュにとって大きな問題ではないと考えている。

スタンダード・チャータード・バングラデシュのアブラール A アンワールCEOによると、バングラデシュの負債は国内総生産(GDP)の15%に相当するという。

「これはとても低い数字です。時にはこれが、我々自身の成長に弊害があるのではないかと考えることもあります。我々はこれまでとても保守的であり、成長のための貸付を行っていないためです」

外国の財源からバングラデシュの民間部門に貸付として入ってきた80億ドル(8134億円)のうち、35億ドル(3558億円)は電力プロジェクトや航空産業、輸出中心産業向けにスタンダード・チャータード銀行が調達したものだ。

The Daily Star Sep 08 2016
http://www.thedailystar.net/business/bangladeshs-growth-story-impressive-1282375

翻訳:長谷川
#バングラデシュ #ニュース #スタンダード・チャータード銀行