テロが成長を阻害する

テロが成長を阻害する
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バングラデシュでここ数ヶ月間起こっているテロリストによる襲撃激化は、安全について懸念を強めるとともに、投資や成長、物価上昇に悪影響を及ぼす新たな種類の不確定性を生み出した。世界銀行が昨日発表した。

「テロ攻撃のような安全面での衝撃は、特に投資や消費者の信頼に影を落とし、経済に打撃を与える可能性がある」
ワシントンに拠点を置く多国間金融機関の世界銀行は、"バングラデシュ開発情報"の中で述べた。

報告書では、安全リスクの具体化でバングラデシュのテロリズムの発生しやすさに世界が注目していることに加え、近年の安定した経済成長が脅かされる可能性があるとする。

以前も外国人が標的になったことはあったが、今年7月のホーリーアルチザンカフェ襲撃は、近年バングラデシュで発生した中では最も犠牲者を出した襲撃事件だった。

この襲撃は駐在員コミュニティに衝撃を与えた。駐在員の多くは衣料品取引や援助機関の仕事に従事している。

恐怖と不確かさで数万人の労働者たちが家にこもるようになれば、労働者収入の減少で経済の70%を占める消費支出に影響を与え、経済の縮小につながる。

ホテルや美容院、レストランなどのサービス部門は襲撃直後から打撃を受けている。人々がこれらの場所に行くことが怖くなっからだ。

消費者取引や生産高も減少した。銀行や保険会社も痛手を負った。前者は迫りくる経済の減速に対する懸念によるもので、後者は保険金請求に対する不確かさによるものだ。

更なる襲撃に対する心配も、バングラデシュの経済展望に影響を与える。投資家たちが不確かな安全状況の中で投資決定を行うことに不安を感じ、外国投資の減少やさらなる資本逃避につながるのだ。

報告書によると、バングラデシュの外国人の安全に関して、衣料品産業を筆頭とした国内輸出中心部門は再びイメージの問題に直面しているという。

もう1つ起こりうる経済への影響は、採用された対抗措置に起因しうるものだ。安全手段の実施に費用が掛かるのだ。

テロリストの襲撃により、対テロリズム措置や自警団や警察戦力の拡大、国境警備の強化など、非生産的な活動にさらに多くの費用を費やすことになる。

投資や貿易ではなく、更なる調査や治安維持に資金が流れることで、成長阻害につながる可能性がある。

「長期的には経済システムにおけるこの摩擦が、大きな影響を与える可能性があります」
世界銀行はいう。

バングラデシュ経済は内外に課題を抱えているものの、まだ回復力を保っている。世界銀行バングラデシュ・ブータン・ネパール担当責任者のキミアオ ファン氏は、ダッカ(Dhaka)事務所でメディアに対して報告書を公開した際にそう話した。

ファン氏はバングラデシュが直面している課題として、民間部門の投資の停滞、送金の減速、金融部門の弱さ、安全面での懸念を挙げた。

ファン氏はランパル(Rampal)石炭発電所に対して聞かれた際、世界銀行はこのプロジェクトに資金提供をしていないと答えた。

ファン氏は、政府は太陽光エネルギーの可能性をさらに追求し、既存の発電能力を拡大し、様々なエネルギー源を開拓し、地域の協力を追求できると話した。

2013-14会計年度、2014-15会計年度の政治的混乱は投資家の信頼感に悪影響を与えた。ここ最近のテロ攻撃により、不安はさらに増した。

さらなる襲撃に対する不安が緩和されなければ、バングラデシュは国内外両方の投資家の意欲を失うリスクを冒すことになる。

「政府は国内外の投資家の生命や資産の安全について、肯定的なメッセージを発信する必要がある」
世界銀行は報告書に記した。

2015-16会計年度にはマクロ経済は安定していたものの、民間投資の国内総生産(GDP)に対する割合は、3年ぶりに21.78%低下した。

だが公共投資が大きく増加したことで合計投資額の対GDP比は増加し、2014-15会計年度の28.9%から、2015-16会計年度は29.4%となった。

公共投資の増加は、社会基盤プロジェクトに対する政府の支出に起因する。だが公共投資の過程には漏れや非効率性があるため、これらの投資が必ずしも社会基盤の資源に変換されるわけではない。

民間投資が減少した結果、民間投資率の予測値と実際の数字の誤差は広がっている。

民間投資が拘束された貯蓄でないことは明らかだ。バングラデシュからの資本逃避は2012-13会計年度にピークを迎えた。

「投資環境がもっと信頼できるものであれば、最近の民間投資率の予測値と実測値との差は狭まっていたはずだ」

報告書によれば民間投資家は、社会基盤の欠損や土地不足と高騰、汚職、政治的不安定、そして最近では安全面の懸念により、バングラデシュへの投資をためらっているという。

だが世界銀行ダッカ事務所のリードエコノミストでこの報告書の著者であるザヒド フサイン氏によると、バングラデシュにはビジネスで利益を出せる見込みがあるという。
「ですが、投資環境を改善する必要があります」

世界銀行によると、バングラデシュ統計局によって7.05%と予測された2015-16年会計年度のGDP成長は、民間投資や送金の減速があったにもかかわらず健全な成長だったという。

世界銀行は今会計年度のバングラデシュの経済成長を6.8%と予測した。

ビジネス緩和の進展が遅いと世界銀行はいう。不適切な社会基盤、金融仲介、官僚制の惰性、そして汚職が、外国だけではなく国内投資をも妨げ続けている。

効率的な裁判外紛争解決の仕組みを欠き、司法手続きが遅いため、契約の執行やビジネスの紛争解決が妨げられている。

世界銀行によると、日用品の国際価格が低いお陰で物価の上昇は減速したものの、世界や仲間の国と比較すると未だ物価上昇率は高いままだという。

世界銀行によるこの報告書では、現在の310億ドル(3兆1700億円)の貯蓄運用が次第に困難になってきているとする。

貯蓄額の増加は為替レートや外国との取引を支える良い緩衝材となるが、物価上昇圧力や資産バブル、経済への不胎化圧力にもつながる。バングラデシュ銀行は一貫して貯蓄を安全だが収益性の低い、外国政府の高流動性証券の形で保持してきた。

2011年は1.15%だったこれらの投資による利益は、2015年には0.61%に下落した。それでも、6ヶ月・米ドル建てのロンドン銀行間取引金利(LIBOR)を継続的に上回っている。

世界銀行によると、前会計年度は衣料品輸出の復調に後押しされ、輸出収入は9.8%増加したという。これに対し2014-15会計年度は3.4%の増加だった。

だが製品や市場の多様化に関してはほとんど進展がないとフサイン氏はいう。

世界銀行によれば、国営の市中銀行を筆頭とした金融部門は、いまだ収益性低下と不良債権や資本の不十分性に関する懸念の拡大に苦しめられているという。

全不良債権のうち約48%は国営の市中銀行が占める。

大規模な債権再編は今までの所、意図した結果を出せていないと世界銀行はいう。

政府はファストトラック構想の下、7つのメガプロジェクトを優先事項化したが、これらのプロジェクトの実施は加速する必要があると世界銀行はいう。

パドマ橋とループール原子力発電所(第1段階)以外のプロジェクトの作業進捗率は、現在ひと桁台前半だ。

世界銀行によれば、現在の割り当て水準はパドマ橋とパイラ港、ループール発電所を除いたすべてにおいて不十分だという。

対外面では、欧州連合の英国離脱に関連する不確定性に起因する継続的な減速が、輸出に打撃を与える可能性があるとする。

原油価格の継続的な低価格の影響で現地の投資や雇用がさらに悪化するため、外国からの送金は不安定な状態だ。

報告書によれば、湾岸協力会議(GCC)参加国で進行中の財政再建が予想よりも激しかった場合、送金の流れは大幅に減速するという。
世界銀行によると、社会基盤や生産性を向上させる技術、人的資本への投資拡大が金融仲介の効率性向上の刷新と結びつけば、より強力な成長基盤を築くことができるという。

「さらにバングラデシュの長期的な成長を維持するには、エネルギー面のボトルネックに対処することが重要である」

報告書ではさらに、炭素税はその潜在的な恩恵とリスクを緩和する効用を考慮すれば、バングラデシュにとって非常に有益であるとしている。

The Daily Star Oct 4 2016
http://www.thedailystar.net/business/terror-may-stymie-growth-wb-1293640

翻訳:長谷川
#バングラデシュ #ニュース #テロ #経済成長