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バングラデシュ初となるビタミンAが豊富な穀物ゴールデン・ライスの野外試験が将来有望な結果となり、速くて2018年に販売される見込みとなった。
バングラデシュバージョンのゴールデン・ライス品種GR2E BRRI dhan29の収穫2ケ月後、バングラデシュイネ研究所(BRRI)の研究者たちは米粒にビタミンA欠乏(VAD)を補うのに十分なベータカロテンが10μg/g(マイクログラム/グラム当たり)含まれていることを発見した。
プロビタミンAとして知られるベータカロテンは、人体がビタミンAに変換できる物質である。
この開発で、研究者間で重大なVAD問題の解決策になるだろうと言われ続けてきたゴールデン・ライスの様々な開発と販売を1999年以来行ってきた米農家の、長い待ち時間は終わったも同然だ。
世界保健機関の世界的なVADデータベースによると、バングラデシュの未就学児の5人に1人がビタミンA欠乏だ。妊娠している女性のうち、23.7%がVADに苦しんでいる。
BRRIの科学者が、昨年度のボロ米期(2015年11月~2016年5月)GR2E BRRI dhan29の収穫後データを分析し、最近、結果は前向きなものであると結論づけた。
「収穫の2ケ月後、我々は平均で10μg/g以上のベータカロテンを、GR2E BRRI dhan29で発見しました。この量は毎日の食生活で摂取するビタミンA必要量50%を賄うのに十分です」
BRRIのゴールデン・ライス・プロジェクトの責任者、パーサ S ビスワス氏はデイリースターに話した。
ビタミンA豊富な米はその色からゴールデン・ライスと名付けられた。スイセンから2種と細菌1種、3種類の異なる遺伝子を暖かい気候に適した品種であるジャポニカ米に結合した。ベータカロテンを作り出すのは可能だ。だがより良いベータカロテンをお米で生み出すため、2005年にスイセンの遺伝子がトウモロコシのものに変更された。
ゴールデン・ライスをBRRIで育つ他の米の品種から隔離するため、BRRIはガジプールのバングラデシュ農業研究所(BARI)の施設内で試験を行った。
必要な法的許可を得られれば、BRRIは商品として販売するための一歩として、これからの2年間、ボロ米時期に複数の場所でGR2E BRRI dhan29の野外試験を行うだろうとパーサ氏は話した。
"バングラデシュのゴールデン・ライス作りの最近の進歩"という題名の論文によれば、遺伝子組み換えのGR2E BRRI dhan29では葉枯病や紋枯病、斑点細菌病、ツングロ病のような主要な病気がなく、ベータカロテン豊富でありながら、BRRI dhan29(品種に注意)くらい収穫量が多い。
パーサ博士とIRRIゴールデン・ライス・プロジェクトの責任者ヴィオレタ・ヴィレガス博士、規制委員会のドナルド J マッケンジー博士の共著であるこの論文は、去年9月にインドのハイデラバードで行われた第4回南アジア・バイオセーフティー定期委員会で発表された。
現在、唯一国内産ゴールデン・ライス品種の野外試験を複数の土地で行っているのはフィリピンだ。一方ゴールデン・ライスの研究過程はインドネシアやインド、ベトナムではまだ研究所や温室段階でとどまっている。
1999年、スイスとドイツの科学者によるこの遺伝子組み換え米の開発以来、バングラデシュの米研究者はゴールデン・ライス研究の最前線にいるにも関わらず、研究が勢いづいたのは2002~03年にIRRI(国際イネ研究所)の植物生物科学者のスワパン K ダッタ氏がベータカロテンに関連する遺伝子をBRRI dhan29に接合した時だけだった。
ビタミンAを米に発生させる遺伝子組み換え技術は1999年まで遡る。チューリッヒのスイス連邦技術機関のインゴ ポトリカス教授と、ドイツのフェリバーグ大学のピーター ベイヤー教授によって初めて応用された。2000年にはネイチャーやサイエンス、タイムなどの有力な定期刊行誌やニュース雑誌がこの大発見を表紙にした。
ゴールデン・ライスの第1世代(GR1として知られている)はスイセンの遺伝子を少しずつ接合することで開発された。しかしその後の第2世代品種(GR2)はより多くのプロビタミンAをつくりだすトウモロコシからとれる粒を使って開発された。
GR2の6品種(科学用語でイベント)が開発され、IRRIはGR2Rと呼ばれる品種に取り掛かることを選択した。IRRIが開発し、結果としてフィリピンとバングラデシュの米の品種に配合された。
GR2R研究所と温室での試験の数年後、フィリピンとバングラデシュはGR2Eのほうがうまく作用するというIRRIの助言に従い、最終的に中止した。
ゴールデン・ライスの共同開発者のピーター ベイヤー教授は本紙に、GR2Rのイベントにはいくつかの問題があったと話した。新しいイベントはうまく作用するはずだという。
IRRIの元研究員で、ベータカロテンを生み出す遺伝子をバングラデシュで最も作られている品種BRRI dhan29に配合したスワパン K ダッタ氏は、ゴールデン・ライスが農家の畑で育てられるのを楽しみにしていると話した。
1994年にBRRIによって開発されたBRRI dhan29は最も生産性のあるバングラデシュ乾季の米品種で、インド、中国、ベトナム、ネパール、ブータン、ミャンマーなど、多くの国でも国境を越えて育てられてきた。
米はベータカロテンを含有しない。そのため主な食糧である米への依存は必ずと言っていいほど、小さい子どもや妊娠した女性に危機的な影響を与えるビタミンA欠乏を招く。
ゴールデン・ライスの1日あたりたった150グラムの消費で、成人のビタミンAの1日あたりの推奨摂取量(RDA)の半分を補えると見込まれる。バングラデシュの人々は日々のカロリー摂取量の70%を米に依存している。
VADは防ぐことのできる子どもの盲目の主な原因であり、ビタミンA欠乏により世界的に670万人の子どもが毎年死亡し、35万人が失明しているとIRRIは話す。
2011年4月、シアトルを拠点とするビル・アンド・メリンダ・ゲイツ・ファンデーションは、バングラデシュとフィリピンのためにゴールデン・ライスの品種を開発し、評価するため、1000万ドル(10億5239万円)以上をIRRIに寄付した。
IRRIとゲイツ・ファンデーションの関係者は、ゴールデン・ライスの発明者と関連した技術開発者はロイヤリティーが必要ない特許へのアクセスを可能にし、新しい米はバングラデシュで販売されている他の品種の米と同価格になり、農家は希望すれば種を共有して改植できるようになるだろうと話した。
The Daily Star Oct 28 2016
http://www.thedailystar.net/frontpage/vitamin-rice-now-reality-1305439
翻訳:米澤
#バングラデシュ #ニュース #ビタミンA #米
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