2010年、南アフリカのワールドカップサッカーで有名になったプラスチック製ホーンのブブゼラは、バングラデシュでも普及した。この音は4月14日のベンガル新年ボヘラ・ボイジャックの祝祭の喜びにふさわしく感じるかも知れないが、本来、この時期の音ではない。リズミカルにスイングできる“テムテミ”、時には“デムデミ”と呼ばれるバングラデシュの伝統的なおもちゃが、過去数十年、主役を演じている。
「色とりどりの紙を使って眼鏡やワニを作るのと同様、テムテミ作りは先祖から受け継いできた家業です。先祖はもともとインドのビハール(Bihar)からやって来てました。私はもう40年、この仕事を続けています」
県内最後の職人になったコミラ(Comilla)県オールドモウロビパラ(Old Moulovi Para)のカハリール・ラーマンさんはいう。
細く切った竹棒、薄い錫板、色の付いたプラスティックや紙、ゴムバンド、紐、段ボールの小片で作られるテムテミは、10タカ(13.7円)で売られる。
「昔は1年中作っていましたが、今ではボイジャックシーズンだけ作っています。小さな子どもたちはこの昔ながらのおもちゃが好きで、時々いくつも作ってくれるように頼んできます。輸入されたブブゼラと違って、テムテミのリズミカルにぶんぶん言う音は邪魔にならないのです。環境に良いようにプラスティックはなるべく使わないようにしています」
カハリールさんは毎年この期間、テムテミの販売でおよそ2万5千タカ(3万4305円)稼ぐ。
だが季節商品のため、この時期が終わると仕事を変えなければならない。他の時期、カハリールさんはトラックを使った化粧品販売をしている。
「良いテムテミを作るにはスキルが必要です。これは全部手作りですが、政府や当局から伝統を守るための支援や関心を一度も受けたことがありません」
「テムテミや他のボイジャック商品ではこれ以上生き残ることはできません。中国製のプラスティック製品が市場を席捲しているからです。うちの子どもたちにテムテミの作り方を教えることはないでしょう」
妻のジュレカ・ベガムさんは話す。
「私は健康な限り、ボイジャックシーズンにはテムテミを作り続けるでしょう。もし誰かが作り方を習いたいというのなら、喜んで教えます」
カハリールさんは恐れている。そのうちテムテミが忘れられ、伝統的な音や色が博物館でしか見られなくなることを。
バングラデシュ/The Daily Star Apr 12 2017
http://www.thedailystar.net/backpage/traditional-toy-festivals-1389955
翻訳:吉本
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