農家向けデビットカード

農家向けデビットカード
2236字

近い将来、農家は農業金融のため銀行で長い列に並んだり、預金を引き出すため銀行やキオスクへ行く必要がなくなるかもしれない。農業資材を買うには、デビットカードを使うだけでよくなるのだ。

種や肥料、農薬、除草剤、あるいは燃料を買う時、NFC(近距離通信)に対応した生体認証付販売時点情報管理(PoS)スマートデバイスを通じ、小売店で支払いできるようになるだろう。

小売店はデビットカードからお金を検知する"支払窓口アプリ"の入ったスマートフォンを備え付けることになる。これらのスマートフォンがPoSになる。

NFCは約4センチ以内の距離にある2台の端末間で通信を可能とするプロトコルだ。

ファリドプール(Faridpur)やボラ(Bhola)、ボルグナ(Barguna)で多くを占める銀行を利用できない農家にとって、これは初めての銀行体験となるだろう。

米国国際開発庁(USAID)農業普及支援活動の主導による共同戦略の下、農家には段階的に各1万~2万タカ(1.3万~2.6万円)の追加農業ローンを備えた、Aカード(農業クレジットカード)が渡される。

返済は使用分だけに年10%の金利を付けて行う。返済期は6ヶ月後に開始する。

2500戸の農家を対象とした3県(ファリドプール、ボラ、ボルグナ)の試験運用は8月17日にファリドプールで開始され、まもなく中南部や南部12県の農家約11万戸にAカードの配布を広げていく。

12県はジョソール(Jessore)、マグラ(Magura)、ファリドプール(Faridpur)、ラジバリ(Rajbari)、クルナ(Khulna)、シャトキラ(Satkhira)、ノライル(Narail)、ボリシャル(Barisal)、ピロジプール(Pirojpur)、ボルグナ(Barguna)、ポトゥアカリ(Patuakhali)だ。

Aカードは、農家が銀行を通じた少額金融アクセスを助ける取り組みだ。

これが成功すればバングラデシュの少額農業ローンの有り様は変化し、農業品購入のデジタル化の採用も増加するだろう。農業の専門家は話す。

標準的な少額金融機関(MFI)ローンは累積年利25~31%で、46週間かけて毎週の返済を要求されるが、Aカードはこれとは異なり、金利が低く返済期間も遅いためより易しい。

USAIDの農業普及支援活動(農業普及プロジェクト)は、農家の銀行を通じた少額金融のアクセス開発支援をダッカ・アーサニア・ミッション(DAM)に委託した。DAMはケアバングラデシュとMパワーを技術パートナーとして選択し、Aカード構想を立てた。

市中銀行のバンクアジアを招き、同銀行と営業地域内でMFIとして活動するいくつかのNGOと良い結びつきを確保したことは、彼らの功績だ。

地方支店や従業員が減りつつあったバンクアジアはこの過程でこれらMFIを代理店として用い、利益を分け合うことになる。

ファリドプールで米や小麦、ジュート、菜種を栽培するモクレスル ラーマンさんは、最も早くAカードを手にしたうちの一人だ。

「Aカードを使って指定の小売店から農業資材が買えるようになります。毎週の返済や現金の取引はありません。6ヶ月後に返済するだけです」
モクレスルさんは電話でデイリースターに話した。

農業普及プロジェクト長のビジュト K マハルデル氏によると、指定小売店はUSAIDとバンクアジアが認証を行い、農家は公正な価格で、粗悪でない資材を入手できるという。

Aカードの所有者は使用後6ヶ月経ってから負債に対応することになる。
「従来のローン業者から受けていた圧力だけのために、収穫期の頭に急いで生産物を投げ売りする必要がなくなります」
マハルデル氏は話した。

バンクアジアのアーサン ウル アラム副頭取(エージェントバンキング担当)はデイリースターに対し、試験運用ではファリドプールの農業資材業者ネットワークに属する小売店10店と契約を結んだと話した。このネットワークはUSAIDの農業投入プロジェクトが運営している。

「各小売店にはPoSサービスが備え付けられます。農家は最初にローン残高を現金で引き出す代わりに、カードを用いて指定の小売店から直接資材が買えるようになります。購入は全て指紋照合されますので、購入意図のある農家だけが自分の口座にアクセスできるよう保証されます」
アーサン副頭取はいう。

試験運用は農家を対象とする少額の農業金融を普及させるため、銀行とMFIが提携したバングラデシュにおける唯一の例だとアーサン副頭取。さらに農家はより柔軟な返済オプションを備えた、より低金利のローンを受けることができ、カードを用いて加入店から安全で簡単に資材購入ができるという。

ケアバングラデシュの農村極貧プログラムの責任者アノワルル ホク氏によると、同プログラムはAカード構想に対し、技術的支援を行ったという。アノワルル氏は試験運用が上手く行けば、小規模農家が農業金融にアクセスしやすくなる大きな機会が生まれると期待を示した。

バングラデシュ銀行の統計によると、およそ55の国有銀行、特別銀行、市中銀行、外国銀行では毎年1700億タカ(2183億円)が農業ローンとして支出されているという。

The Daily Star Aug 26 2016
http://www.thedailystar.net/frontpage/debit-card-farmers-1275577
翻訳:長谷川

#バングラデシュ #ニュース #農業 #金融