活気づくバングラデシュ

活気づくバングラデシュ
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ロンドンの週刊誌"エコノミスト"は、バングラデシュの民主主義は弱まっているが、経済は高い経済成長や送金収入の増加、いくつかの社会指標の改善に伴って上り調子だとした。

バングラデシュはこの30年間で大きく変化した。土曜日に発行されたエコノミストの最新号はこう書いている。

「バングラデシュの1億6千万人の多くが貧しいままだとしても、この国はもはや『インドの脇の下』で片づけることはできない。この国のGDPは中国に匹敵する年7%の速さで成長し、一部の社会指標では隣の大国インドを上回っているのだ」

今や輸出は上に中国がいるだけの衣料品産業や、故郷に送金を行っている1千万人の勤勉な外国労働者のお陰で、バングラデシュは過去10年間のうち1年間を除き、経常黒字を享受してきたと書く。

同誌によれば、中国の国家主席が前回バングラデシュを訪問した1986年、状況はかなり違っていたという。例えば当時の国家主席は400億ドル(4兆1500億円)を携えてきたりはしなかった。

政府筋によれば、この数字は中国の現指導者の習近平氏がインドのリゾート地ゴアで開催される発展途上国会合に向かう途次の10月14日、1日の短期滞在のとき持ち込んだとされる合計額だ。

当然ながらこの大金は、高架高速道路や鉄道、橋、発電所といった21の基盤プロジェクトに対する借款という形でもたらされたものだ。だがそれでもこれは歓迎すべきことだ。

このおかげでバングラデシュはまさに今、他にも"求婚者"を得ている。日本は最近、中国による液化天然ガスターミナルや4つの石炭火力発電所を含む、67億ドル(6951億円)プロジェクトによる新海港の建設提案金額を吊り上げた。7月にはロシアが、原子炉建設に対して114億ドル(1兆1,827億円)の借款を約束した。

インドは既に自身の送電網を通じてバングラデシュに電力を供給しているが、今年になって大型石炭火力発電所の新規建設に対し、15億ドル(1556億円)の大金を提供することに合意した。アジア開発銀行(ADB)や世界銀行のような多国間機関も支援を増やしている。

シェイク ハシナ首相が中国の申し入れに耳を貸さないということはないだろう。

バングラデシュ経済は頑健であるものの、いまだ受けられる限りの支援を必要としている。鈴を鳴らすリキシャや警笛を鳴らす三輪自動車、クラクションを鳴らすSUVによるダッカ(Dhaka)の耳障りな行進に一瞬でもさらされれば、バングラデシュが渋滞の国だとわかるだろう。

1700万人が住み、国連予測では2030年までに人口2700万人になるとされるダッカの交通緩和は、今すぐには実現しないだろう。大量輸送システムの計画は現時点では存在せず、3段階に分けて実施される都市間高速道路計画の初めの段階も、2018年までは開始しないことになっている。

同様にバングラデシュの1300万世帯は現在電気無しで生活している。資金援助で建設される発電所の追加発電力全てをもってしても、バングラデシュは将来エネルギー不足に直面するだろう。ADBの報告によれば、バングラデシュは予想される需要を充足するため、2030年までに発電力を3倍にする必要があるとされ、新しい発電所を建てるだけではなく、古い発電所を建て替えなければならないと警鐘が鳴らされている。

「だがおそらく最大のボトルネックは、物的なものではなく政治的なものだ。シェイク ハシナ氏の率いるアワミ連盟は2009年から政権についており、2019年に予定される総選挙までの期間中、反対勢力はさらに弱まっている」

「しかしこれはアワミ連盟が人気を得ているという意味ではない。暴力が蔓延する中、2014年の選挙は反対勢力のほとんどがボイコットしたため、実質一党政治という結果につながったのだ」

世界の注目はダッカの高級レストランで7月に発生した襲撃事件でピークを迎えた、イスラム過激派による一連の血みどろの殺戮に向けられているが、バングラデシュ人にとって更なる心配事は、多くの人々から法秩序の広範な崩壊ととらえられるような物事だとエコノミスト誌は書く。

1971年の血なまぐさい戦争でパキスタンから分離して以来、かなりの動乱があったにもかかわらず、バングラデシュは意見の相違を尊重する伝統がある。近年、自身もかつての粛清の犠牲者だったアワミ連盟がライバルへ報復を始めたことで、この伝統は蝕まれた。

アワミ連盟はイスラム教徒やその他の反対勢力を標的とする超法規的な殺害や失踪に加え、民族主義党(BNP)を相手にしたものだけでも3万7千件の妨害的な訴訟の集中砲火を巻き起こした。

かつてアジアの虎たちがそうだったように、バングラデシュは政治がより民主的になるまでの間、独裁政治に耐えることになるのかもしれない。

一方でダッカのある非政府組織のリーダーは首を振り、この国が綱渡りをしていると話した。
「人々がその不満を表明する機会が無いのは危険な事です」

The Daily Star Oct 19 2016
http://www.thedailystar.net/business/booming-bangladesh-1300678
翻訳:長谷川 
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